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2019-12-17 00:00
(連載2)中国元スパイによる豪州への機密漏洩事件について
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
もちろん、この元諜報部員から得た情報がこれだけであるはずがない。AFP通信が伝える以上の情報をオーストラリア政府はこの元諜報部員から手に入れているのだろうが、「知る権利」を主張してマスコミが情報開示を要求されても、その内容全てを明らかにしたりはしない。また、マスコミが報じている内容は、オーストラリアの情報機関が頑張れば掴めるレベルの情報だともいえる。
オーストラリア政府にすれば、中国が豪州国内で工作し香港に関する情報操作をしていたという事が明らかになり中国への国民の印象が悪くなれば良いのであって、それ以上の情報を与える必要はない。同時に、中国による香港への民主派弾圧や、スパイをはじめとした軍の介入を印象付ければ、また国際社会に発信できればそれで良いのである。さて、中国はどうするであろうか。
今のところ、中国政府からは公式にこの事に関してのコメントはでていない。一般論で考えれば、無視が一番良いのだから不思議ではない。下手に反応し揚げ足をとられ工作をしていた事が真実であるとされるのが、国際的には最悪である。ー度実例を作ると全てが疑われるので今後の活動にも支障が生じる。つまり、外交的な活動に制約ができる。衆知としても中国政府としては否定しなければならないのだ。その上で、「裏のことは裏で処理」するのが安心だ。つまり、一般論で考えれば、中国政府はこの事案については公式には黙殺し、他方でその元スパイの暗殺を試みるということになろう。実際、報道によるとその元スパイは「帰国すれば命はない」と述べ、政治亡命を認めるよう訴えたとされる。スパイを生業にしているのだから亡命しようとしたらどうなるか、スパイゆえに知っている情報を潜入先に漏洩させればどうなるか自覚しているのであろう。
その上で、中国としては諜報作戦だったものそのものを異なるアプローチの企てに作りかえて、または、その現象を逆手にとって次に何かをしかけるということになる。それだけ、中国から見たオーストラリアは、工作しやすく影響力の大きな場所なのである。このような事件から見える事は少なくない。このような「スパイの問題が表に出ない」日本も、他人事ではないと、考えるべきであろう。(おわり)
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