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2019-12-19 00:00
(連載1)香港の民主化デモはどこに向かうか
葛飾 西山
元教員・フリーライター
香港において逃亡犯条例改正案に端を発したデモは、発生から8ヶ月を過ぎた現在においても、収まる気配はない。その後デモ側の要求は民主化要求に転化し、五大要求を香港政府に突きつけるに至ると、中国当局は、人民解放軍を投入するなどの挙に出て、一国二制度の崩壊などが危ぶまれるようにもなった。香港政府は逃亡犯条例案の撤回だけは受け入れたものの、他の要求については無視し続けている。しかし11月に行われた香港区議会選挙では民主派が約8割を超える議席を獲得し、今後の動向は予断を許さない状況が続いている。そうした中、私はこの状況に対して徐々に違和感を覚えるようになっていた。
その違和感が何に起因するものかは分からずにいたが、最近『日経ビジネス』(WEB版、8月18日付)での広岡延隆氏のコメント「香港で170万人が必死の訴え、それでも冷淡な中国本土の人たち」に接したことで腑に落ちた。それは、香港のデモの高まりに対して意外と中国本土の人々の反応がないことであった。広岡氏は、この背景には、中国当局による情報統制・操作だけでなく、かつて経済的に上位にあった香港に本土は見下されてきたという感情があると指摘しており、なるほどと肯首できるものであった。このコメントに接し、私なりにも別の要因を考えるに至った。それは中国本土で社会生活を牽引している世代は1989年の天安門事件を間近に経験した世代であるということである。
この要因も本土の人々の冷めた対応の一因になっているのではないだろうか。胡耀邦元総書記の死を悼んで自然発生した集会は、やがて共産党政府の腐敗批判や民主化要求へと転化した。1986年のフィリピン革命、1987年の韓国民主化、東欧で進展しつつあった共産党政権の崩壊といった流れの延長で、中国の民主化集会も高まりを見せ、各地の都市でも集会やデモが繰り広げられた。そしてフィリピンでは軍が大衆側についたこともあり、天安門に配備された人民解放軍の動向にも注目が集まった。しかし最終的には6月4日に解放軍がデモ隊に対して武力行使に踏み切り、一気に民主化運動は反革命暴乱として鎮圧された。
このとき人々は、人民解放軍が国軍ではなく、国共内戦に勝利した共産党の軍隊(私軍)であること、そして共産党が国家を超越した存在であることを思い知らされた。中華人民共和国は、当たり前のことであるが、共産主義の国である。共産主義の国とはプロレタリアート独裁の国であり、人民が最高権力者である。そして共産主義革命を達成するために共産党だけがその人民と国家を指導することができるという国である。この建前を額面どおりに読み取ると、共産党は国家に対して超越的な、まるで神のような存在となる。(つづく)
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