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2019-12-20 00:00
(連載2)香港の民主化デモはどこに向かうか
葛飾 西山
元教員・フリーライター
共産党の位置づけは、中華人民共和国憲法にも明確に規定されていない。序言に建国物語が述べられ、人民が共産党の指導のもとで勝利したことが語られているだけである。つまりこの序言の建国物語がすべての根本原則として共産党を万能ならしめているのである。このことは常に念頭に置いておく必要がある。1989年、多くの人々はこの原理原則を改めて痛感し、「人民」で居続ける(人民の敵にはならないようにする)ことを肝に銘じたのかもしれない。あの時の彼らが、現在の社会生活を動かしている現役世代である。1989年の記憶も覚めやらぬ彼らがどのような行動規範をもっているかは論ずるまでもなかろう。
中国の大多数をしめる漢民族は幾多の王朝の変転を経験し、異民族支配さえも受け入れてきた。多少の窮屈さはあっても、ちゃっかりと実利だけは得て、時代を超えて一族(もっと広い同族ネットワークとして宗族)の繁栄を追及してきた。いくつもの王朝よりも長い一族の繁栄をだ。そういう意味では人々にとって、1989年の民主化要求の高まりがあったとはいえ、共産党支配は受け入れるべきものという考えになっているのかもしれない。腹の底では分からないが、表面的にはそうであろう。
かつて竹内実氏は、中国の現代史を「百花斉放・百家争鳴」→「大躍進運動」→「劉少奇による修正主義」→「文化大革命」と大きく左右に触れることの繰り返しと評した。現在は、強いて言えば、自由に物は言えないが実利だけは求めている状況だろうか。中国経済が困窮し人々の実利を保障できなくなれば暴発することもあろうが、当面そのようなことも起こりそうにない。中国の人々は香港のことは香港のことと見ているのだろうか。もしそうだとすれば中国当局が最も恐れていることは本土に飛び火することであろうから、人民解放軍をちらつかせはしても、現場に投入することなく香港だけの問題として処理できるだろう。その限りにおいて「一国二制度」は中国当局にとっても今現在では都合のいい制度と言える。
このように考えると、香港で民主化を要求している人々は、中国国内の「同志」の参入をまったく期待できないことになる。そうした中、何より民主主義を標榜する他の国々こそが、香港人民の民主化要求を黙殺することなく支援する義務があるといえる。ただし、気を付けねばならないことは、そうした民主主義諸国が、他国に自分たちの思想(民主主義)を植え付けようとして、中国との過度な摩擦を生じさせることは避けねばならない、ということである。したがって、一方で、香港での民主化要求を支援しつつ、他方で中国国家との全面対決は回避する、という高度な外交手腕が日本やアメリカなどに求められているといえよう。(おわり)
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