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2019-12-26 00:00
ガラス細工の日中韓サミット
鍋嶋 敬三
評論家
20周年を迎えた日中韓3カ国首脳会議(サミット)が2019年12月24日、中国・成都で開かれ、協力ビジョンをうたった「成果文書」が発表された。北朝鮮の核・ミサイル問題の解決や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定実現に向けての協力をうたい上げたが、実態は3ヶ国の思惑が異なる中での協力という「呉越同舟」の感は免れない。サミットの前後に日中、日韓、中韓の2国間首脳会談も行われたが、それぞれの利害関係の違いが改めて浮き彫りにされたのである。議長国の中国は貿易紛争、人権問題で米国との対立が激しさを増す中、足元を固めるためにサミットに活路を求めた面もある。3ヶ国合わせて世界のGDP(国内総生産)の24%を占める日中韓の動向は米欧も含めた世界に影響を与える。国際秩序の再編を巡るせめぎ合いは激しさを増すだろう。
日中韓3ヶ国の違いが出たのは北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を巡る姿勢である。成果文書では「決議に従った対話、外交を含む国際的協力、包括的な解決」のみが完全な非核化の達成につながることを強調した。制裁決議の着実な実行が前提である。しかし、中国はロシアとともに制裁緩和の決議案の準備を進めている。二律背反ではないか。韓国の文在寅大統領は北朝鮮に対する融和姿勢が顕著で、厳格な決議の実行を求める日米とは隔たりが大きい。韓国は米中間でその立場が揺れ動いて定まらず、中国が取り込む余地を作り出しているのだ。2017年11月の中韓首脳会談で文氏は習近平主席に「三つのノー」で言質を取られたと伝えられる。(1)高高度防衛ミサイル(THAAD)を追加配備しない、(2)米国のミサイル防衛に参加しない、(3)日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させないーである。中国は米韓間にくさびを打ち込むため、陰に陽に「三つのノー」をてこに使うだろう。
成都での中韓首脳会談では、文大統領が「香港、新疆ウイグル問題は中国の内政問題」と発言したと中国が公表した。韓国側は発言の趣旨が違うと否定したが、国際的に厳しい批判を浴びている人権問題で習政権に政治的に利用されたことは否めない。文政権下の韓国が自由主義・民主主義の「西側世界」に属しているのかという疑念を生むことになった。日中関係では、2020年前半に安倍晋三政権が想定している習氏の日本国賓訪問を受け入れる政治的環境が整っているか、という疑問がある。安倍政権は「日中関係は完全に正常化した」と繰り返している。であるなら、中国海警の公船による尖閣諸島水域への連日の侵入をどう解釈するのか。「核心的利益」とする台湾への侵攻作戦の一環として尖閣諸島奪取を視野に入れている中国は海上法執行機関の海警を党中央軍事委員会直属として人民解放軍海軍の指揮下に入れた。
海警は1000トン以上の大型の公船(巡視船)を日本の2倍保有し、機関砲を搭載した1万トン級も配備するなど航続距離、作戦能力を大幅に増強している。2019年、尖閣諸島の領海外側の接続水域内への航行は12月22日現在276日(海上保安庁調べ)と過去最高を記録した。水域航行の公船は延べ1073隻、このうち領海に侵入したのは同112隻に達した。国家主権の象徴である領海への意図的、組織的な侵害を公然と繰り返す現状を「正常」と認めることは、中国の侵略的な意図と行動を容認することになる。安倍首相は習主席との会談の席上、「東シナ海の安定なくして、真の日中関係の改善はない」と発言し、中国の自制を強く求めた。中国が理由を明らかにせず邦人を相次いで拘束していることにも安倍首相は「速やかな対応」を強く求めた。首脳会談での首相の公式発言にもかかわらず、中国側が日本の国家主権侵害や邦人の人権を損なう行動を止めないのであれば、日本国民は習近平氏を国賓として受け入れることはできない。
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