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2020-01-09 00:00
(連載2)EU「戦争の記憶」決議が日本に問いかけていること
久保 有志
公務員
プーチン大統領は2019年12月に行われた記者会見において、 「ナチスの指導者アドルフ・ヒトラーとソビエトの指導者ヨセフ・スターリンに対して、戦争の勃発に等しく責任を負わせることは全く容認できず、不正確だ」と述べ、上記決議を根拠にロシア非難を展開するポーランド等諸国に対し、歴史の歪曲を正すよう訴えた。
さて、こうした「歴史の記憶」をめぐる今回のEU決議が日本に問いかけていることは何であろうか。まず日本が忘れてはならないのは、太平洋戦争として認識される先の大戦について、直近の総理談話で言及されているように、日本が当時の国際秩序に対する挑戦者となり、 国外の無辜の人々に計り知れない損害と苦痛を与えたという加害者的な自己認識を有していると同時に、 自国の無数の市井の人々が犠牲となったという痛みの記憶も抱えていることである。後者については、広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦による悲惨な結果に加え、北方領土におけるソ連の地上侵攻や日本人捕虜の抑留問題などが容易に想起されるだろう。
このうち、上述のEU決議が問題視した「主権国家の領土割譲と拡張主義を伴うスターリン主義」との絡みでいえば、今も続く北方領土問題の源流になっている、ソ連による日本固有の領土であった歯舞・色丹・国後・択促の4島の占領について触れないわけにはいかない。歴史的な事実として、1945年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を破棄して対日宣戦布告を行い、満州・樺太・千島列島・北方4島全域を制圧した。このうち、北方4島について、近年、ロシア首脳は第二次世界大戦の結果として、ソ連そしてその後、ロシアの領土になったとの認識を展開し、その事実を日本に認めるよう求めてきている。
しかし、今回のEU決議を受けて、スターリン主義にかんする歴史的な再評価を行うべきであるならば、このスターリン主義の一番の犠牲者であるロシアそのものが、その負の遺産についての認識を改めるべきではないだろうか。ましてや、法の支配と人権を重視する戦後日本が、北方領土問題について、勝者の論理による暴力支配の結果を容認する理由はない。日本は、北方領土が日本固有の領土であると、引き続き平和的な方法でもって主張しつつ、その正当性を国際社会に訴えていくべきであろう。(おわり)
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