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2020-01-15 00:00
(連載2)フィンランドとバルト三国の微妙な関係
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
そのような歴史的背景の中で、フィンランドでは、サンナ・ミレッラ・マリン(Sanna Mirella Marin)氏が第46代首相に就任した。なんと34歳である。同氏はかつて「お店のレジ係」をしていたということで、そうした人物が首相に就任したことが話題になった。しかし、バルト三国とすれば「強いフィンランドが後ろに控えていることが重要であり、フィンランドが揺らげば、自分たちはロシアとフィンランドの狭間で、また苦境を味わうことになる」ということのほうが、よほどの関心ごとである。そのような目から見れば、サンナ・マリン首相は頼りなく映ったのではないか。
その中でエストニア派の保守党、特に極右政党の政治家は「売り子が首相になり、路上活動家や教育を受けていない人々が閣僚に入った」と侮辱ともとれる発言をし、問題を引き起こした。これはおそらくエストニアの国内事情によるものだろう。エストニアの保守側からすれば革新的な女性政治家がなんの政治的経験もなく政界に登場するのはあまり歓迎すべきことではない。その保守層に支持される政治家が儀礼的でも「期待している」などと発言することは、選挙民に受けが良くない。他方で「女だからロシアに強く出られないだろう」などと直截的な物言いもさすがにできない。そのようなことから、ある意味で国内保守層に対するリップサービスの意味も込めて、あのようなコメントをしたに違いない。本人としては問題を起こさない婉曲的な表現のつもりが、自国の大統領が謝罪を強いられる結果となったわけである。
しかし筆者は、「人間は、やってみなければわからない」と思っている。若い女性であるという属性だけで政治家としての資質が見えるはずはない。マリア首相は、「フィンランドを誇りに思う。ここでは貧しい家庭に生まれた子供でも教育を受け、多くのことを成し遂げられる。お店のレジ係だって首相になれる」との発言をしているた。ある意味で、「外交上の難しさ」を試練として突き付けられ、そこでうまく政治家らしい対応をしたのではないかと思う。
私の希望としては、マリア首相には、ぜひエストニアの保守党党首をフィンランドに招待し、温かく迎えてあげてもらいたい。大陸的な視座から懐の深さを示す良い機会である。このような時こそ、バルト三国とフィンランドの関係の緊密さを世界に示す良い機会なのではないか。歴史を踏まえ、そしてその歴史を尊重しながら未来に向けた新たな行動を起こす。これこそ政治家に必要な資質である。この若い首相に期待したい。(おわり)
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