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2020-01-17 00:00
不利な日米交渉は長引かせよ
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
昨年末、日本の安倍晋三政権とアメリカのドナルド・トランプ政権との間で貿易交渉が行われた。アメリカ側に得るところが多く、日本側に得るところがほとんどない内容で合意がなされた。日本側はアメリカ側の農産品に対する関税を段階的に引き下げる一方、アメリカへの自動車輸出に関してはアメリカ政府から「関税を引き上げない」と言質を取ることに失敗した。更にアメリカは、TPPに入っていた場合と同等の日本へのアクセスのしやすさ(関税の引き下げ)を手にすることができた。日本の完敗ということになる。安倍晋三首相が、アメリカのドナルド・トランプ大統領から何とか妥協を引き出そうと媚態を駆使していたことは外側から見るとよく分かるが、成果は十分とはいえない。貿易交渉だけではない。日米交渉では、日本駐留の米軍に対する日本政府からの「思いやり予算」の4倍増(20億ドルから80億ドル)の話も絡めて議題に上った。簡単に言えば、日本側はアメリカら押されっぱなしということである。アメリカ政府は韓国政府に対しても、駐留経費負担の増額を求めたが、韓国政府は明確に拒絶したのとは対照的だ。
日本にとっての生命線は自動車輸出だ。アメリカへの輸出の20%を占めているし、自動車会社が支えている人々の数を考えると、まさに日本経済を支える柱だ。トランプ政権は、日本からの自動車輸出を「国家安全保障上の脅威」と言い出し、だから関税を引き上げることもありうると日本側に脅しをかけた。日本政府はその脅しに屈した形だ。貿易合意の中で、確固とした文書で関税引き上げを行わない、という一札を入れさせることができなかった。と言うことは、貿易交渉があるたびに、これからも自動車への関税引き上げを脅しとして使われることだろう。
また、日本側からの思いやり予算の4倍増も無理やりにでも飲まされることになるだろう。アメリカは、日本を小突いて6000億円の増額を得るのだ。日本周辺の脅威を過剰に煽り立ててアピールするという、チンピラまがいのやり方をアメリカ側はしている。アメリカも昔ほど余裕はなくなり、背に腹は代えられないとばかりにこうした脅しをしてくる。
こうした脅しに対しては、粘り強く交渉を長引かせるということが大事だ。事実、そうしたことが1980年代まではできていた。が、今では日本側の交渉担当者が一体どちらの味方なのか分からないありさまだ。脅しに対しては「柳に風」「気に入らぬ風もあろうに柳かな」という態度で接するべきだろう。しかし、今の日本政府ではそういうことができる人材もいないし、指導者層もとうに諦めているし、こうした上流階級がアメリカの手先となっている。本来、年頭は景気の良い話をしたいものだが、日本の将来はますます暗くなるということだけは確かだ。
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