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2020-01-23 00:00
メドベージェフがプーチンの後継者に一番近い
飯島 一孝
ジャーナリスト
プーチン露大統領は15日、議会への年次教書演説で政治体制を変革する必要性を述べ、憲法改正案を示した。これを受けて大統領と20年以上、コンビを組んでいるメドベージェフ首相が内閣を総辞職し、安全保障会議の新設の副議長に任命された。大統領は4年後の任期満了を控え、大統領権限を抑える一方、自らの影響力を残すのが狙いとみられる。プーチン大統領は、すでに20年間も国家指導者の地位に座り続け、強権政治を推進していることから国民の支持を失いつつある。このため、大統領の権限を弱め、大統領職を2期以上務めることを禁ずる改革を行い、自らの大統領職延長を否定する考えだ。そこで、プーチン氏とのコンビで同じく20年間、国政を支えてきたメドベージェフ首相を安全保障会議のナンバー2に据え、今後も二人体制を維持していく方針と見られる。
メドベージェフ氏はプーチン大統領が卒業したレニングラード大学法学部の後輩で、大統領に黙々と仕えてきた。プーチン氏が2000年に大統領に就任すると、首相に指名され、プーチン氏が大統領を連続2期務めた後はメドベージェフ氏が大統領に、プーチン氏が首相に入れ替わった。この二頭立ての政治体制は、直列や縦列の二人乗り自転車をさす「タンデム」から、タンデム政権と呼ばれた。まさに一心同体の態勢を維持し、4年後にはまた元のプーチン大統領、メドベージェフ首相体制に戻り、20年間この態勢が続いてきた。今回、メドベージェフ氏が就任する安全保障会議の副議長職は、議長を務める大統領の補佐役である。2人の親密な関係がこれだけ続くのは、メドベージェフ氏が大学の先輩であるプーチン氏に頭が上がらないだけでなく、私的な生活面でもプーチン氏の支援を受けて豊かな生活が保障されているからだろう。一説には、プーチン氏がメドベージェフ氏を選んだのは、自分より背が低いからだと言われている。
新首相に就任するのは連邦税務局長官のミシュスチン氏で、実務家としてプーチン氏の評価が高い人物という。プーチン氏が前任のエリツィン大統領から首相に指名された時と違い、後継者に据える人物ではないとの見方が一般的だ。プーチン大統領の後継者と見られている政治家は何人かいるが、まだ本命と目される人物は見えてこない。そこで、今回の憲法改正で大統領権力をいまより弱め、議会に権限を委譲することで自らが退任した後もなんらかの形で影響力を残すのが狙いとの見方が強い。
エリツィン氏が後継者としてプーチン氏を指名したのは、自分が退任してからも身の安全を守ってくれる約束を取り付けたからと言われている。強力な権力を握ってきた人物ほど、退任後の安全に危機感を持つものらしい。その意味では、メドベージェフ氏が後継者に一番近い人物と言えるかもしれない。いずれにしろ、政治改革の結果として、現大統領の強権政治を改めるきっかけになれば国民にとっては喜ばしいことだろう。今後、ロシア政治がどう動くのか、じっくり見守って行きたい。
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