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2020-01-31 00:00
強力野党の結集に必要な政権構想
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
昨年末から続けてきた立憲民主党と国民民主党の「合流」問題はその協議をやめることにしたという。今の段階で賢明な結論ではある。そもそも、この両党の議員の多く(見るところ「国民民主党」側に特に)、中選挙区制度が終焉を迎えた時期に政界進出を決意した人たちが多くいて、これが20世紀末に至って選挙制度が小選挙区制に切り替わったために当時満杯の「自由民主党」から政界参入できず、反対に乱立していながらそれゆえに候補者が不足していた野党側(「新進党」や「民主党」等)に「仕方なく?」入党して国会の議席をめざしたという「保守人士」が多く居たのではなかったか?
これらの人たちにはその後政権奪取の幸運も棚ぼた式に出現した(民主党政権)とはいいながら、それは束の間のできごと、それ以後日本政治史上最長という安倍政権に国政での活躍の場を奪い取られてしまった。この間の数度に及ぶ選挙(主に衆院選)のたびに同僚は死屍累々の惨状のままに今日を迎えて、こうした挙げ句に「合併でもしようか?」という便宜主義に迫られた。これではうまくいくわけが無い。その証拠としてすでに一昨年の小池百合子都知事にそそのかされて迷走した「希望の党」という「絶望的」経験が有ったではないか。あの時の小池都知事の「選別させていただきます」として「選抜された」人たちが国民民主党に多く集まっているのは上述の歴史に原因が有ったればこそだったのである。
そもそも、対抗馬たる安倍氏率いる自民党といえども恐らく党内で不満は内攻していることであろう。ここで内紛が発生しないのは何にもまして安倍氏にくっついてさえいれば、馘がつながるからにすぎない。その「首」といえども不満を隠して「忖度」を続けることによって存続できるだけの事であってみれば、その大多数は野党政治家と五十歩百歩のストレスを溜め込んでいることであろう。しかし、彼らは議席の安定度が有るから良いが、野党側の現職議員諸氏にはこれが無い。これを安定させるために「政権奪取」したいというのが「合併」構想の事の起こりであろう。だが、それにはしっかりした「政権合意」が前提であることは、上述の「過去」を見れば一目瞭然だ。さらに、この国のように冷戦時代から一貫して米中ロ三極のど真ん中にあるという地政学上不安定な位置にある日本は、近隣の韓国とも北朝鮮ともまた潜在的には台湾も含めて四面楚歌の歌を聞くがごとくである。そこにあって平和を基調とする要の石となっていこうというのだから、日本の政治家というのは、よほどの「優れた政治思考と才の有るもの」でなければならない。そういう「優れた政治思考と才の有るもの」が出る政党構想が欠けては「過去」を繰り返すだけに相違ない。
アメリカ国民がトランプ大統領を選ぶほどに混沌としている現代世界、戦後一貫してやってきた米国追随外交一本やりでやっている安倍外交で果たして生き残れるだろうか。その上で、これに取って替わって政権を担当しようというのであれば、先の野党の便宜主義的な野合戦術では期待し難く、いっそ人材を整理して出直した方が良い。わけてもあわよくば安倍自民党に拾ってもらいたかったがごとき政治志向の者たちでは政権奪取の資格は得られまい。この度とりあえず単純合併をあきらめた以上、しっかりした理論を確立した上で強力野党を作ることを期待する。
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