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2020-02-03 00:00
(連載2)インド太平洋戦略:日本はどこまで本気なのか
河村 洋
外交評論家
実際に慶応大学の神保謙教授は『国際問題』2019年12月号のインド太平洋特集で「アメリカの太平洋戦略は1960年代から70年代にかけてのイギリスのスエズ以東からの撤退によるインド洋での力の真空を第7艦隊が埋めることになってから、実質的にインド太平洋戦略に進化した」との旨を述べている。それにもかかわらず、今日の我々が目にするのは西側の対イラン戦略の足並みどれほど乱れているかという状態である。そうした多元的な観点から、アジア太平洋を超えたこの地域の関係諸国の関与を述べてみたい。
アジア太平洋諸国同士でも国益と政策的優先事項が違うように、インド洋諸国もそうである。最も注目すべきはインドが「ルック・イースト」国防戦略で中国を最重要脅威と位置付けているにもかかわらず、アメリカからの戦略的な自立の維持を望んでいることである。そうした中でアフリカ諸国は中国の一帯一路をどこまで受け入れるべきか、戸惑っている。これら諸国は欧米から民主主義や人権で高説を説かれることは望まぬ一方で、ケニアのように中国から5G通信システムと紐付き援助による支配を受け、自分達にはほとんど関心もない東アジアの紛争に巻き込まれる羽目に陥るのではないかと懸念を抱く国もある。そして、我々には域外の主要国もインド太平洋戦略に受け容れる必要がある。
こうした観点から、アメリカとヨーロッパの協調はきわめて重要である。しかしドナルド・トラプ大統領は外交よりも彼自身の再選を優先して国内の保守派支持層への人気取りに走り、米欧間では中絶権やLGBTQ問題といった新しい人権をめぐる価値観の衝突が深まっている。マイク・ポンペオ国務長官はそうした権利を「信頼性のない権利」だと嘲笑する有り様である。
同盟国間での政策協調が停滞する中で、インド太平洋戦略には新たな挑戦者が登場してくる。ブルッキングス研究所のストローブ・タルボット氏は、アメリカとヨーロッパがイランをめぐって対立する一方で、ロシアが中東での影響力を増していると論評している。安倍氏はアメリカによるリーダーシップ不在の穴を埋めようと、日本の政治的プレゼンスを示すために野心的な構想を打ち上げた。しかし今日では、安倍氏が第6回TICADナイロビ会議で発言したようなアフリカとアジアをつなげようという壮大な政策構想を実施しようにも、アラブ商人やイギリス帝国主義者の時代よりも事態ははるかに複雑である。我々は中国の拡張主義といった特定の差し迫った問題に対処する必要がある一方で、他方では該当地域全体でのインド太平洋戦略のコンセプトの見直しが必要である。(おわり)
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