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2020-02-12 00:00
イラン司令官殺害が金正恩に与える影響
松川 るい
参議院議員
米国がドローンによりイランの革命防衛隊の英雄ソレイマニ司令官を殺害したが、このことが北朝鮮の金正恩委員長に与える影響について述べたい。金正恩委員長が合理的であるという前提に立てば、トランプ政権を舐めてはいけないという教訓と同時に核放棄は絶対にできないという教訓を得たことになる。今後の米朝協議については、プラスとマイナスの両面があるが、相対的にはマイナスが多いのではないか。
何より、トランプ大統領は予測不可能だ(トランプ大統領自身の論理の中では間違いなく一貫しているとは思うが)と捉えた可能性が高いと思う。彼と命を懸けたディールはできないと判断するのが金正恩委員長の受け取り方として自然だと思う。なので、北朝鮮は年頭の発表通り、トランプ政権の方針に余り左右されることなく逃げ切り作戦(時間稼ぎをして最終的にパキスタンのごとく核兵器国としての現状を認めさせる)を主としていくことになる。無論、朝鮮民族はオポチュニストであり、米国が北朝鮮の希望する方向で応じるなら米朝協議を進めて得たい果実を得るよう努力するだろうが、選挙を控えたトランプ政権がリスクを取る可能性は高くないので、状況は双方にとっての時間稼ぎになるだろう。
米国というかトランプ大統領を舐めると怖いことになるとを金正恩委員長は思い知らされたに違いない。イランとの軍事衝突を死ぬほど避けようとしていたトランプ大統領が最もリスクの高い選択肢を選んだ。金正恩委員長はあまりに筋が通らないトランプ大統領の思考回路に頭を抱えたことだろう。したがって、トランプ大統領が決定的に重要だと思っている権益を簡単に犯すことはできない。金正恩はそういう判断を心理的に強いられている。具体的にいえば、ICBM能力は既に開発済である可能性があるが、しかし、これを大っぴらに公表するような実験はしないのではないか。米国に北朝鮮というか金正恩攻撃の名分を与えるに過ぎず、ブラフとして使うには危険すぎる。そもそも、米国と正面から戦うような能力を北朝鮮は持ちようがないのだから、そんなリスクを取ることは有害無益だ。
また、金正恩は、益々核放棄をしない意志を固めたに違いない。イランは、曲がりなりにも、米国ときちんと合意し、その核合意をIAEAの査察も入れて遵守してきた。しかし、米国の政権が変わったら合意を破棄され、しかも攻撃された。これは、米国と合意をしても破られる可能性があることと、やすやすと攻撃されたのは、核抑止能力がなかったからである、と解するのが金正恩としては自然である。金正恩の実際にどう考えているのか、それがどういう外交姿勢や軍事行動に表れるのか、日本政府は注視する必要がある。
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