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2020-02-25 00:00
(連載1)「窮乏化法則」破綻が示す日本共産党の閉塞
加藤 成一
元弁護士
カール・マルクスの主著『資本論』は、「1867年にドイツで出版され、資本主義社会の運動法則を弁証法的に分析解明し、資本主義が社会主義に移行せざるを得ない必然性を論証した著書である」(向坂逸郎訳「資本論」第一巻訳者まえがき昭和46年岩波書店)。爾来150年が経過したが、20世紀における旧ソ連、中国など社会主義国家の成立を含め、全世界におけるその政治的、経済的、国際的、文化的影響力は甚大であったと言えよう。マルクス著『資本論』によれば、「資本主義社会における利潤(剰余価値)の根源は賃金を超えた労働部分(剰余労働)である」(前掲「資本論」第一巻252頁、ソ同盟科学院経済学研究所著「経済学教科書」第一分冊183頁1955年合同出版社)。
「賃金は生活費によって決まる」(前掲「資本論」第一巻221頁)。「利潤を増大する方法として、労働時間延長(絶対的剰余価値生産)と機械化による労働生産性向上(相対的剰余価値生産)の二つがある」(前掲「資本論」第一巻639頁)。計画経済ではなく市場経済の資本主義社会では、利潤は効率的資源配分と競争原理に基づく経済運営に必要不可欠であるところ、「資本主義社会における生産等の経済活動は利潤獲得を目的として行われる」(前掲「経済学教科書」第一分冊185頁)。
そのため、資本家(企業)は利潤の極大を目的とするから、賃金削減、長時間労働、技術革新による生産性向上が恒常的に行われ、低賃金、過労死、労働強化などをもたらした。このため、とりわけ、欧米先進資本主義諸国では、利潤追求による賃金労働者の貧困や社会的不公正が社会問題となり、これを是正する必要性と労働運動が起こり、20世紀に入り「修正資本主義」や「社会民主主義」が台頭して、英国、北欧に「福祉国家」が成立した。これは明らかにマルクス著「資本論」の影響であり、社会主義革命への恐怖、利潤の解明による理論的影響は否定できない。
ところが、マルクス著「資本論」によれば、「資本主義が発達し、資本の蓄積が進むと産業予備軍が増え、労働者階級の貧困が蓄積する。これは資本主義的蓄積の絶対的法則である」(前掲「資本論」第一巻808頁)、「利潤を増やそうとする熱望は搾取階級の側での富の蓄積と無産階級の側での失業と貧困と抑圧の増大をもたらす。資本主義が発達するにつれて、プロレタリアートの相対的貧困化と絶対的貧困化が進み、プロレタリアートの生活水準は低下する」(前掲「経済学教科書」第一巻244頁~245頁)、「労働者は絶対的に貧しくなっていく。前よりも貧乏になり、前よりも悪い生活を送り、もっと乏しい食事をとり、もっと腹を減らし、穴倉や屋根裏部屋に住まねばならなくなる」(レーニン著「資本主義社会における貧困化」レーニン全集18巻466頁1956年大月書店)とされる。以上がマルクス著「資本論」の核心であり重要法則である「窮乏化法則」である。そして「窮乏化」による労働者階級の反抗が社会主義革命をもたらすのである(前掲「資本論」第一巻951頁~952頁)。(つづく)
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