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2020-02-26 00:00
(連載2)「窮乏化法則」破綻が示す日本共産党の閉塞
加藤 成一
元弁護士
しかし、「窮乏化法則」は理論的及び実証的に検討する必要がある。まず、理論的に、ドイツ社会民主党のベルンシュタインは、「我々は労働者をあるがままに受け取らねばならない。そして、労働者は共産党宣言で予見されていたほど一般的に窮乏化してもいない」(宇野弘蔵編「資本論研究2巻」204頁1970年筑摩書房)と述べている。周知の通り、共産党宣言では「プロレタリアートは、革命においては鉄鎖以外に失うべき何物も持たぬ」(マルクス・エンゲルス著「共産党宣言」世界教養全集15巻128頁1965年平凡社)とされている。理論的に、どちらが正しいかは自明であろう。なぜなら、「資本論」自身が「19世紀中葉のイギリスにおける産業予備軍の存在から資本主義的蓄積の一般的法則として窮乏化を帰納するという理論的欠陥を有していた」(前掲「資本論研究2巻」209頁)からである。
のみならず、実証的にも、日本や欧米の発達した先進資本主義諸国では、経済が成長し、労働者の名目賃金は不断に上昇し、資本主義の発達による労働者階級の「窮乏化」は起こらず、むしろ生活水準は向上している。そのうえ、失業保険や医療保険などの各種社会保険や年金・医療・介護などの社会保障制度が整備され、社会保障関連予算は国家予算の3割前後にも達しているのが日本など先進資本主義諸国の実態である。そのため、さすがに、評論家蔵原惟人元共産党幹部会委員も、「労働者自体が無一物の無産者という感じではない多数の層が成長し自動車も持っている。このような変化に共産党としても対応する必要がある」(蔵原惟人著「蔵原惟人評論集」9巻187頁1979年新日本出版社)と述べ、労働者階級に「窮乏化」の事実がないこと、むしろ生活水準が向上している事実を率直に認めている。
そうすると、「資本主義が発達すればするほど労働者階級は窮乏化する」という、マルクス著「資本論」の核心であり重要法則である「窮乏化法則」は、理論的にも実証的にも、重大な誤りであると言わざるを得ない。その証左に、マルクスが主著「資本論」で予言した「社会主義革命」が先進資本主義諸国では起こらないのは、革命の担い手である労働者階級の「窮乏化」が起こらなかったからである。
反対に、後進資本主義国であったロシアや中国などで「社会主義革命」が成功したのは、ひとえに、革命の担い手である労働者や農民が窮乏化していたこと、社会保障制度がなかったこと、議会制民主主義制度が未発達であったからに他ならない。したがって、マルクス著「資本論」の「窮乏化法則」には理論的にも実証的にも重大な誤りがあり、少なくとも、日本、欧米などの先進資本主義諸国では、もはや有効な「社会主義革命理論」などと到底言えないことは明らかである。そうだとすれば、マルクス著「資本論」に代表されるマルクス・レーニン主義(「科学的社会主義」)を党規約2条で党の理論的基礎とする日本共産党の「先進国革命論(改定党綱領五の18)」が、理論的にも実証的にも非現実的であることも明らかである。(おわり)
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