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2020-02-28 00:00
英国が示した「一般的」国民投票の危うさ
船田 元
衆議院議員
イギリスにおけるEUからの離脱の是非を巡る国民投票から約3年、国内では主に北アイルランドとアイルランドの国境対策を中心に混乱が続いていたが、下院議員選挙の結果を踏まえて、ジョンソン政権は昨年末に離脱を正式に決めた。今年一年をかけて離脱後の英EU間の新しい関係構築が話し合われるが、交渉が不首尾に終わったとしても逆戻りすることはなくなった。両者とも不退転の決意で、離脱後の交渉に臨むだろう。
今回のイギリスのEU離脱は、EU側の財政や社会制度の厳しいルールに反発したことや、中東からの難民受け入れに関する否定的な国民感情から端を発したものだが、第二次世界大戦後のヨーロッパの新しい秩序作りであるECSC(欧州石炭鉄鋼連盟)、EEC(欧州経済共同体)、EC(欧州共同体)そしてEU(欧州連合)という、拡大を続けた国家間の統合の流れを逆回転させるという、歴史的な転換を意味している。
3年前の国民投票の結果をめぐっては、それが間違いであったとか、もう一度やり直すべきだとの世論も相当高まったが、イギリス政府はそのような修正を受け入れなかった。国政の重要課題について、直接国民に聞くという国民投票の危うさや難しさをまざまざと見せつけられた。わが国でも憲法に限らず、「一般的」な国民投票導入の是非について、様々な意見が取り交わされているが、大いに教訓としなければならないだろう。(「一般的国民投票」とは、憲法改正など憲法や法律に定められた手続きとしての国民投票ではない、その他の国政に関する重要事項に係る国民投票である。)
今後のイギリスは単独で生きていくことになるが、EUとの関係や他の国々とのFTAやEPAの交渉を急ぎ、経済の安定を目指さなければならない。一方のEUもこれ以上離脱国を増やさないためにも、EU司令の内容や出し方、強制力の程度などを再検討しなければならない。戦後の国家間の統合という壮大な実験とその成果を、決して無駄にしてはならない。
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