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2020-03-05 00:00
中国発コロナウイルスの怪と日本の対応
坂本 正弘
日本国際フォーラム上席研究員
1.中国発コロナウイルスの怪
中国発コロナウイルスとの闘いは、多くの日本人に、これまでの人生で経験したことのない恐怖、不快、不便を与えている。常に感染を恐れる緊張があるが、発熱しても病院に行けない、学校へ行けない、多くのイベントは中止、友人と会えないなど、人生設計が滅茶苦茶となっている。さらに、本年夏の東京オリンピックは中止かどうかという憂慮すべき状況にある。日本での四苦八苦をよそに、発現地の中国では、ウイルスが収束に向かい、日本人を入国規制の対象にしているのは、誠に割り切れないが、中国から、世界への謝罪の言葉は一切聞かれない。むしろ武漢の閉鎖という犠牲を払って、世界への感染を防いだ。コロナウイルス発生は中国からだが、感染させたのはほかの国だとの論理である。さらに中国では、習総書記は危機を機会に変えた指導者として、称賛されている。膨大なウイルス感染者の診療情報は、貴重なビッグデータであり、AIで分析し、今後、先端医学情報として、後発伝染国へ恩を売り、中国の国際的影響力を高める機会とする状況である。現在のところ、アジアの他、欧州、中東でも感染拡大が続いている。米国での感染は限定的だが、広範になれば、世界のパワーバランスにも影響しかねない状況である。
2.中国での猖獗と収束そして自余の世界での悪化
中国発のコロナウイルスは、昨年12月に武漢で発生し、本年1~2月には猖獗を極めた。習政権は、1月23日、人口1千万の武漢市及び湖北省を隔離する強権を発動したが、武漢市内部の状況は、ウイルス感染者が、病院に殺到し、あふれ、阿鼻叫喚の状況であった。習氏への非難も表面化し、フィナンシャル・タイムズ紙のアジア・エディターのジャミール・アンデリーニ氏は、新型肺炎による「習王朝の危機」を指摘した(日本経済新聞2月14日P7)。しかし中国当局は、死者の数が2月23日ごろから減少し、湖北省以外での死者は限定的としている。習政権は、3月5日からの人民代を延期したが、職場復帰や生産拡大を呼びかけ、交通規制も緩め、コロナウイルスの制御への自信を示した。中国寄りとされるWHOテドロス事務局長は、3月2日、中国の状況は改善し、韓国、イタリア、イラン、日本の状況を最も懸念する述べた。その他の国での状況は限定的としたが、楽観的すぎないか?
3.中国独裁強権方式の成功?
感染症の対応には強権が必要だが、人口1千万の武漢市含む湖北省の隔離を強行した。また、今回の感染防止には、膨大な人員を動員した監視体制の効果が指摘されるが、ドローンやスマホも活用された。また、中国はすでに10万人近いウイルス感染者のデータを保持するが、そのデータをAI分析し、先端医学情報として、後発感染国に供給し、世界に恩を売るカードとなる。習総書記は称賛を集め、世界に対し、共産党体制の優位を主張する。
4.世界の不安
コロナウイルス拡大のなか、世界の株価が大幅下落するなど、景気への懸念も高まり、G7財務相・中銀総裁はリスクに対応すべく、財政・金融を含むあらゆる政策を行使すると表明した。米国は、大統領選挙の最中であり、メデイアの関心事は、民主党での候補者選びに集中する。トランプ大統領は、ペンス副大統領を責任者とするコロナ対策本部を発足させ、監視を強めているが、死者も出始め、入国制限強化の動きがある。米中対立は、一月中旬合意が成立したが、ハウウェイへの制裁を強める中、コロナウイルス問題はどう影響するか?
5.日本の苦悩
米中対立の中、中国からの春風が吹き、習総書記の訪日が2020年4月予定されていた。このためもあるが、今回のウイルス問題では、日本は、中国からの渡航者に緩い態度をとり、国内感染の蔓延を招き、今や、中国を始め諸国から、日本人の渡航制限を受けるにまで至っている。安倍首相は2月末、小中学校・高校の一斉休校やイベントの取り止めの強い措置を行った。今はウイルスとの闘いに全力を挙げることだが、改めて、この自己主張の強い、狡知にたけ、今やIT技術を備えた、隣の、共産党大国と付き合うには、毅然とした対応が必要との教訓を得られたように思う。第一に、中国発コロナウイルスでは、危機管理の鉄則通り、初動は厳しい方策をとるべきで、1月春節前に、中国からの入国を全面禁止すべきであった。日本は最も被害を受ける国として当然の措置であった。第二に、日本の株価の下落が大きいが、レアアース問題にみるように過度な中国への依存は避けるべきであり、サプライチェーンもこれを機会に分散すべきであろう。第3に、尖閣での緊張や、不透明な日本人留置などを考えると、日本の総合国力(軍事、技術、宣伝力)の充実が改めて必要である。現在の南風が、いつ北風に変化しても対応できるような用意が必要だということである。
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