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2020-03-09 00:00
予算委員会における委員長の役割
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
衆参両院での予算委員会審議。審議と言ったところでそこで議論が練られて与野党意見を止揚した結論に昇華するというわけではなく、最後は政府原案通りに「強行採決」をする以上結論は決まっている。四の五の言わずに粛々と会議を時間通りに消化してその敏腕ぶりを魅せつけようという委員長と「そうはさせじ」と抵抗する野党。議題の中身は異なるとも会議のフローはこういう調子でここ例年通りに進む。
それにしても、この模様をNHKのテレビ中継で見ていて実に不愉快なのは、不規則発言に対して居丈高に静止命令を頻々と発する衆院予算委を取り仕切っている委員長棚橋殿の発言だ。質問者と政府委員との間に存在する意見の違いが際立ってくると当然会場はざわつく。分けても野党席から野次が多く発せられるのは当然だ。委員長が与党委員から選出されている以上、議院内閣制では政府側に賛意を有しているのも当然だ。当然だけに近頃この国にはびこる忖度を野党に対して働かせて議事を進行させれば議場が荒れなくて済む。
つまり、会議の運営における議長の役割は餅つきの要領だ。委員長は杵をもって政府が提供した粗くふかした蒸かし米たる議案を叩いて餅にする役割。それに対して与野党を問わず委員は合いの手を入れてまんべんなく餅にするように手返しをするのが役割だ。杵を揮う委員長と合の手を入れる与野党委員、そのリズムを旨く取るのが委員長の役割だろう。しかるに棚橋泰文衆院予算委員長は合の手役に口数多く指図する。実に権威主義的である。結果、会議は混乱して結果的に時間を空費するか、実質審議時間(餅つき時間)を失った委員、特に野党委員に不満が募り、結果的に餅はコブ餅になってしまう。
野次は議場の華、誹謗中傷や人権侵害でなければ少々の逸脱の有無は言論の府の活力のバロメーターであろうに。「お願いだから静かにしてください!」などという情けない委員長の声は聴きたくない。それより立法府に対して審議をお願いしている行政府の責任者たる安倍総理大臣が不規則発言(野次)を盛んに飛ばしている。棚橋委員長は、これをこそ止めさせるべきで、それが議長たる委員長の役割である。
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