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2020-03-09 00:00
新型ウィルスを制し東京五輪を開催しよう
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
第1回目の東京オリンピックは1940年(昭和15年)に開催(第12回)がされることとなっていたが世界戦争の暗雲の中で軍事優先のために返上し「幻のオリンピック」となった。戦後になり1964年(昭和39年)10月10日に東京で第18回オリンピックが開催され日本の復興とその後の経済成長の節目となった。その56年後、元号が令和に変わって2年目の本年2020年7月24日に東京で第32回のオリンピックが開催される。
昨年末から中国で発生したコロナウィルスによる新型肺炎は今やアジアだけでなく欧米、中東までも飛び火し、3月4日にはパレスチナの街路で日本人女性が現地市民から差別的発言を浴びせられる事態まで発生してしまった。韓国、イタリア、イランに加え日本をも出入国制限国に指定する国が増えている。もっとも、米国の運営会社、英国の船主、多国籍な船員・船客3700名が乗船していた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスに対する日本の懸命な対応は海外では十分に評価されていない。客観的データに基づいた官民の海外広報を更に積極的に展開する必要がある。アメリカのカルフォルニア州では知事が非常事態宣言を発し、トランプ大統領は特別予算を割り当てた。IOCは5月末までに東京開催を予定通り開催するか否か決定するとしている。このまま日本がコロナウィルスを抑え込めなければ、第2回目の「幻の東京オリンピック」となってしまう。
残された時間は少ない。3月5日政府が発した中韓隣国からの入国制限強化は遅きに失したが、後知恵の批判、為にする非難、枝葉末節に拘泥して足踏みをしている暇はない。対策によるしわ寄せ、不便、不都合、不平等、不公平等は追って損失補償することとし、ウィルス拡散防止に官民合同で防止策を早急に打ち出すべきである。国民は国家存亡の危機と認識して1973年のオイルショック時のようにトイレット・ペーパー買い占めに走ることなく、一致団結して協力することが望まれる。台風、地震、大風雪、洪水、津波等々災害の博物館と言われる日本が新型ウィルスの抑え込みに成功しオリンピックにこぎつけることで、今後同様の事態に対する直面する国々のウィルス対策に貢献できよう。これは同時に2008年バブル崩壊以来経済が低成長期に入り、後期高齢化社会にも拘らず、産業構造は改革されず、先進国の中で最低の賃金と労働生産性により、若年層の内向思考、閉塞感を打破し、水平線の拡大する節目の事業となることが期待される。
IOCとは透明性のある議論により、競技種目の一部変更(マラソンは札幌ではなく当初予定通り東京で、かつての体育の日である10月10日)、規模の縮小、オリンピックとパラリンピックの切り離し、無観客開催、参加したい選手のみ参加等々につき透明性のある協議を続け、来日しない観客や選手が出ることは止むを得まいが、客観的的データの迅速な公開により風評被害を最小限に止める努力が必要である。
コロナによる影響で世界経済も冷え込んできており、世界経済の先行きに暗い影を投げかけている。G7財務相会議等では更なる成長率低下が懸念されており。従って対コロナ対策は各国それぞれの問題ではなく人類共通の闘との様相を帯びてきている。感染拡大を喰い止めることは国際的な連携と協力が必要である。一段落したら、日本がIOCとWHO以下、航空会社、船舶会社、検疫組織、関連財団、民間研究機関と共同作業し、不測の事態に対する対応、信頼性のある情報取集と迅速な伝達、対応諸措置の共通化等のイニシアチヴを取ることも考えられよう。
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