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2020-03-24 00:00
(連載2)アメリカ大統領選挙と中東問題
河村 洋
外交評論家
トランプ政権がタリバンと成した合意も同様に危険である。一体、彼にぬけぬけと民主党を非難する資格があるのだろうか?次なる9・11事件を防ぐために、アメリカは開発援助を通じてアフガニスタン政府への関与を続ける必要がある。さらに外交問題評議会のリチャード・ハース会長は『プロジェクト・シンディケート』誌への3月3日付の寄稿で「アメリカはアフガニスタン政府と別個により細かく定められた安全保障条約を結び、兵員撤退の条件、そして経済開発から安全保障までの長期的な支援を取り決めておく必要がある」と主張する。それによってアフガニスタンでのアメリカの継続的なプレゼンスが保証されるからである。
アフガニスタンでタリバンが政権の座から引きずり降ろされてから、アメリカの仲介によって大統領選挙の決着を着けている理由には、この国の憲法が大統領による統一的な統治を前提としながらも、実際には部族や軍閥が国土を割拠していることも一因として挙げられる。彼らは結果を素直に受け止めない。トランプ氏の対抗馬に出た候補者達は、イラン核合意、サウジアラビアの人権、イスラエル・パレスチナ和平交渉ではほぼ一致して多国間主義とアメリカ的モラリズムの尊重を訴えてはいるが、彼の無責任なアフガニスタン撤退に対して説得力のある反論を提示していない。
アメリカの指導者も国民もまだ、ポスト9・11の中東について明確なビジョンを有していないように思われる。候補者の内で、バーニー・サンダース氏は「中東でのアメリカの長い戦争は軍産複合体と石油業界のせいだ」とする反戦左翼の見方に囚われている。それでは別種のアメリカ・ファーストである。有権者はアフガニスタンには関心がないかも知れないが、民主党はトランプ氏のやり方に対して強固な代替案を示す必要がある。
外交問題評議会の調査アンケートにある4件の質問の他に、共和党でトランプ氏の対立候補となっているビル・ウェルド氏は、アフリカに関する質問を中東のテロと関連付けて答えているが、他の候補者達は開発援助とエンパワーメントへの言及にとどまった。実際に中東は他の外交問題と深く関わり合っている。アメリカはアジアにもっと比重を置き、中国の脅威の増大を食い止めるべきだという声もある。しかし私はアメリカの国際主義回帰の方が、どの地域を戦略的に重視するかよりもはるかに重要だと言いたい。中東から手を引くことは、依然として向こう見ずで時期尚早である。(おわり)
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