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2020-03-24 00:00
やはり日本にカジノはいらない
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
国際会議場、ホテル、カジノ等を一体化した統合型リゾート施設(IR)に関しては超党派の「国際観光産業振興議員連盟」が2010年4月に発足し、大物政治家を含むメンバーは一時200名以上に膨れ上がり、IR基本法案は超党派の議員立法として提出され2016年12月に可決されたのに続き、特定複合観光施設区域整備推進本部(本部長は安倍首相)が内閣に設置され、カジノ事業免許、入場料、入場回数制限等の具体的実施方法を決めるべくカジノ管理委員会が設置され2018年7月にIR整備法が成立した。更に、ギャンブル依存症対策基本法も採択された。東京五輪を追い風にして、カジノによる雇用促進、外国人観光客増大等による経済波及効果は7兆円超となると喧伝され、本年前半での実現はならなかったがIR設置は当面3自治体とされ、各自治体が事業者を決定する段階となっている。私は本e-論壇で再三、カジノ解禁に反対したが(2013年11月3日,2014年8月22日,2017年6月10日)、コロナウィルス感染者の世界的広がりにより東京五輪を予定通り7月24日に開催すベきか議論されているこの機会に、再度解禁に反対しIR法及びIR整備法の見直しを提言する。
反対の理由は、第1に、日本国民の伝統邸な勤労精神を蝕む恐れがある。正当な勤労をせずに短絡的に「遊ぶ金が欲しかった」と老人や女性から金品を強奪したり、グループ詐欺、強盗の事例が示すように特に若年層に悪影響を及ぼすことを懸念している。また、暴力団(ヤクザ)や反社会的集団に活動の場をあたえ治安が悪化する恐れもある。カジノが日本に明るいし社会的影響を与えるとはないであろう。外国人観光客には、カジノに閉じこもるより豊かな自然に囲まれた里山、地方の名所旧跡、美しい日本を巡回してもらうことの方が、地方創生、再生、活性化にも役立つであろう。
第2に、日本人はギャンブル依存症になりやすく厚労省調査では約536万人を超えている。依存症が増えることが判っているからこそ、その予防、医療相談体制の整備、患者と家族のケア、社会復帰支援のため措置等、入場料や入場回数等を細かく決めるのであろうが、何のためにそこまでして解禁するのかは善良な一般市民には理解できないであろう。カジノは負けて不幸になる人(主に日本人)を前提にしており、高利貸業者の参入の余地もあり、決して健全な経済成長戦略ではない。
第3に、IRは主にカジノ収益で国際会議場やホテルなどを運営するシステムで大きな利権が絡むので、水面下の米中等の巨大資本によるカネまみれの誘致運動は激しさを増し(元内閣府IR担当副大臣秋元司自民党議員の贈収賄事件は氷山の一角と言われている)、不法資金の洗浄(マネーロンダリング)にも利用される恐れもある。本年東京五輪の行方が不透明である現在、次の国際的イベントは2025年の大阪万博であろうが、一過性のインバウンド需要に頼るのは危うい。今までの世論調査でカジノ解禁の賛成は50%を越えたことはない。国会議員や地方自治体の関係者、不動産業者、ゲーム機業者、観光事業者ではなく、一般市民の目線からの全国的世論調査を行い、地方を含めた長期的経済活性化の観点からカジノ解禁の是非につき再検討して欲しい。
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