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2020-03-24 00:00
再論 危機こそチャンス:中国リスクの再認識を
四方 立夫
エコノミスト
此度のコロナウイルス危機は武漢が発生源であり、中国政府による隠蔽並びに初動の遅れがパンデミックに繋がったことは「中国寄り」とされるWHOの報告からも明らかである。にもかかわらず、中国は自国の責任を認めないばかりか、言わば「加害者」から「救世主」に転じ、イタリア等への人員及び物資の派遣などによりその影響力を強めようとしている。更に、国内の批判者を拘束するばかりでなく、米国有力紙の記者を事実上追放し、「ウイルスは米軍が持ち込んだかもしれない」と強弁するに至っては、「中国は異質の大国」との認識を改めて抱かざるを得ない。メディアでは「サプライチェーン」と言う言葉が良く使われているが、実態はそれよりも遥かに進んだ「サプライチェーン・ネットワーク」であり、設計~部品~組立~販売が網の目の様に密接に繋がった構造になっており、中国がそこに深く関与していることから、今回の騒ぎは中国のみならず広く全世界の生産~供給~需要に多大な悪影響を与えている。今世紀に入り「チャイナ・プラス・ワン」が唱えられるようになった。殆どの国が中国に大きく依存しており、かかる「過度な中国依存」が世界経済に甚大な被害を及ぼしている。「米中貿易戦争」を受けて中国からベトナムを始めとした東南アジアの国々に生産拠点を移す動きが出ているが、今後はより一層これを進めるべきだ。中国をあくまでネットワークの一部を構成する国とし、不測の事態が発生した際には他国が代替できる体制を再構築することが肝要なのである。
我が国の経済界トップは昨年秋の安倍首相訪中以来「日中関係改善」を好機と捉え、最大の市場である中国に前のめりになっている。しかし、自他共に認める「中国最強商社」である伊藤忠の社員を始め少なくとも10名の日本人が理由も明確にされないまま長期間に亘り拘束されていることは、実務者レベルの警戒感を高めており、多くの会社が新規大型商談には及び腰になっているのが実状である。又、中国は習近平国家主席の国賓としての訪問を控えながらも、尖閣諸島周辺に過去最大数の中国公船を送り続けている。中国が挑発行動を繰り返していることは、「中国は日本の真のパートナーとはなり得ない」ことを示すものであり、今後とも中国とは「強い警戒感を持って距離を置いた関係」を保つべきである。
従来「技術革新は自由な環境の下でしか生まれない」とされていたが、中国の5Gは「技術革新は独裁体制の下でも生まれる」ことを証明したものであり、今や中国の5Gは技術的にも価格的にも多国の追随を許さず、欧州は米国の強い要請にも関わらず最早それを排除できない状態にある。鄧小平は「中東に石油あり、中国に希土類あり」として、早くから米国に大量の留学生を送り込んだ。現在、その多くが「海亀」として中国に帰国し「中国製造2025」の下、新規技術の開発に国威を掛けて取り組んでいる。また、5Gのみならず、AI並びに量子コンピューターの分野に於いても中国は世界に先駆けているとの報もある。中でも、量子コンピューターは将に世界を根本的に変え得る「ゲーム・チェンジャー」であることから、我が国は欧米諸国と連帯しその開発並びにITの世界に於けるルール作りに最大限尽力することが喫緊の課題である。
嘗て我が国は日中国交正常化に際し、中国の言う「日本人は中国人の老朋友である」、「中国人は井戸を掘った人のことを忘れない」、「日本と中国は一衣帯水である」などの美辞麗句に踊らされ、中国に惜しみなく資金、技術、人材、等を提供し続けた。それが、日本を大きく上回る経済大国に中国を押し上げたばかりでなく、今や中国は日本にとって安全保障上の最大の脅威となったことを忘れてはならない。今回のコロナウイルス騒ぎを「中国リスク」を再認識し、日中関係を再考するための奇貨としたい。
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