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2020-03-31 00:00
(連載1)コロナ緊急事態:政府の本気度は如何?
葛飾 西山
元教員・フリーライター
3月30日、私が本欄で、やや感情を込めつつ、現下の非常事態への対応の必要性を訴えたその日に、期せずして、専門家会議のメンバーで日本医師会の釜萢常務理事が記者会見で「専門家会議ではもう緊急事態宣言を出す時期で一致」とのコメントを発表した。私の思いが杞憂に終わればと思っていたが、最早、一刻の猶予もないことが明らかになった。ただ政府と情報を共有しているはずの専門家会議が政府よりも先に緊急事態宣言の要望を表明した現象をどう捉えれば良いのであろうか。なかなか重い腰を上げない政府にさすがに業を煮やした、待っていられない、というところであろうか。
では緊急事態宣言は出されるのであろうか。ここで緊急事態宣言を規定している「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を見てみると、第32条で「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるもの(新型インフルエンザ等)が国内で発生」し、「当該疾病の全国的かつ急速なまん延により国民 生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと認めるとき」「基本的対処方針等諮問委員会の意見を聴いて」発令するとある。緊急事態宣言発令までに3つのハードルが設けられている。私権を制限・侵害する内容が含まれるため、濫用を防ぐためにハードルを設ける必要はある。しかし二つ目のハードル「全国的かつ急速なまん延」はいかがなものであろうか。そもそも今次のウイルスで問題にされているのは各都市でのクラスターやオーバーシュートで、しかもそれが東京で重大化しつつあることであり、「急速に」「全国に」蔓延する恐れとは異なる状況である。
こう考えると、いくら東京で感染が重大化しても、あくまで「局地的」と断定されてしまえば、基本的対処方針等諮問委員会すら開かれないことになる。つまりこの条項が大きなハードルになって、そう簡単には適用できない恐れがある。うがった見方をすれば、政府が手をこまねいて強制措置を取らなかったことの責任を追及されても「法律の定める要件を満たさなかったので」という言い訳が可能になるのである。もしかすると政府・官僚が法的に自己弁護する以外に使い道がないのではないか。なぜ「発症者数が構成人口の〇%を超えた地域」などのように局地的にも対応できる条項にしておかなかったのか。
できれば緊急事態宣言を出したくない政府の心情をよく表した条項としか言いようがない。そもそも「急速に」「全国的に」蔓延する恐れのある状況に至ったらその時点で手遅れではないか。これではまるで「抜く気のない伝家の宝刀」である。北海道知事の緊急事態宣言も法的根拠は何もなかった。小池都知事の表明が「お願い」に終始している理由が分かる気がする。かつて雲仙普賢岳が噴火した際、島原市長を務められた鐘ヶ江管一氏は「早め早めの周知徹底が大原則。仮に実際に被害が出なかったにしても、現場の人たちは“空振りだった”と非難してはいけません」と説く(「日刊ゲンダイDIGITAL」2014.10.19公開)。これが危機管理の大原則ではないか。(つづく)
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