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2020-04-24 00:00
不確実性が支配する世界へ
鍋嶋 敬三
評論家
世界的大流行(パンデミック)の新型コロナウイルス禍が猛威を振るい続けている。感染者は260万人、死者は18万人を超えた(4月23日現在)。経済的、社会的損失、世界全体に対する影響は計り知れず、不確実性と情勢の不安定化が支配的になるだろう。経済的影響は未確定だが、国際通貨基金(IMF)が4月13日発表した2020年の「世界経済見通し(WEO)」は世界の成長率予測を-3.0%と1929年の「世界大恐慌以来最悪の景気後退の可能性が極めて高い」と予測している。この予測では米国が-5.9%、ユーロ圏が-7.5%、日本は-5.2%、中国は1.2%である。このような深刻な事態は中長期的に国際経済体制に影響を及ぼすだろう。新型コロナウイルス発祥の地である中国は世界第二の経済大国。「世界の工場」であり日本でも鉄鋼生産からマスク製造に至るまで大きな影響を受けている。極度の中国依存のマイナス面が露呈、供給網(サプライチェーン)再構築の動きが加速せざるを得ない。
世界的に感染がいつ終息するかの見通しは立たない。感染者や死者の数では米国を筆頭にイタリア、スペイン、フランスなど欧州の先進国が並ぶが、その陰で最貧国が多いアフリカでの爆発的な感染が最も懸念されるところだ。南アフリカ、アルジェリアやナイジェリアをはじめ、アフリカのほとんどの国で感染が確認されている。医療水準が低く上下水道など生活・衛生環境が劣悪なところが多いだけに、エボラ出血熱のようにいったん広まれば収拾がつかなくなる恐れがある。アフリカ開発会議(TICAD)の主催国として援助を続けてきた日本は積極的な支援の手を差し伸べる時である。中国はインフラ整備の「一帯一路」構想でアフリカに影響力拡大を図ってきた。アフリカ旧植民地の宗主国だった欧州諸国もコロナ対策の資金援助で中国と競っている。
しかし、欧州連合(EU)も一枚岩ではない。救済資金の活用などを巡って支援の拡大を求める財政難のイタリア、スペインなど南欧国と財政規律重視のオランダ、ドイツなど北欧国の対立でEU内部の亀裂が深まった。英国は1月31日午後11時(GMT)のEUからの離脱(Brexit)後、移行期間の年末までとされる通商交渉も「コロナ」による混乱で難航が予想される。コロナウイルスを巡る米中の対立もこじれる一方である。トランプ大統領は4月18日の記者会見で「中国が故意に引き起こしたのなら、報いを受けるべきだ」と述べた。トランプ政権の政治基盤でもある中西部ミズーリ州政府は4月21日、中国が新型コロナウイルスについて虚偽の事実を伝え、適切な措置を怠ったため州に重大な損害を与えたとして、損害賠償の訴えを連邦地裁に起こした。
国際安全保障上の摩擦も強まった。東シナ海の尖閣諸島(沖縄県)周辺の接続水域への中国海警局公船の侵入は日本の抗議にもかかわらず2020年1月から4月19日までに349隻に達した(海上保安庁統計)。これは前年同期の1.46倍という急増ぶりである。中国国内のコロナウイルス大規模感染で延期されたものの、「日中関係の改善」を唱えて4月に予定されていた習近平国家主席の国賓訪日を前にしても、日本に対する主権侵害をさらに強める中国の本心がどこにあるかを明確に示す。6ヶ国・地域の領有権紛争が続く南シナ海では4月に入って中国の公船がベトナム漁船を沈没させ、「西沙区」及び「南沙区」の行政区を新設して実効支配を強化した。これに対してベトナムやフィリピンが抗議、日本も茂木敏充外相が中国の王毅外相に懸念を表明した。「航行の自由」作戦を続ける米国は豪州と共同訓練を実施して中国をけん制した。中国は最近、爆発力を抑えた低出力核実験を極秘に実施したと米紙が伝えたが、米露中の核軍拡競争が懸念される。トランプ大統領は3月26日に「台湾支援法案(TAIPEI法案)」に署名、成立させた。台湾と断交して中国と国交を開く国の拡大を防ぐためだ。さらに世界保健機関(WHO)は「中国寄りだ」として拠出金停止を表明するなど圧力を強めると、中国がWHOへの支援強化を表明するなど米中対立を深める新たな要因になってきた。
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