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2020-04-25 00:00
(連載2)ロシアの憲法修正が及ぼすグローバルな意味合い
河村 洋
外交評論家
クレムリンと歩調を合わせるかのように、ハンガリーのビクトル・オルバン首相はコロナ危機を好機と捉えて議会を停止し、自らの独裁的権限をさらに強化している。プーチン政権のロシアとヨーロッパの極右によるそうした一連の行動から読み取れることは、コロナ禍による国際政治の枠組の急速な変化、というよりもむしろ、それ以前のパワー・ゲームの加速であるということだ。
また、目下の修正案は国際的な規範に相反するものである。修正案には国際法に対する国内法の優位が記されているからだ。実際に、ロシアは2008年のジョージア侵攻、2014年のクリミア併合、自国内での頻繁な人権侵害など、国際法を侵害してきたし、2012年にWTO加盟を果たしたものの貿易の自由化には積極的でなかった。さらには、領土不割譲も記されており、ロシアの近隣諸国、中でも日本とウクライナとの関係は複雑なものになるだろう。修正案は、まさしく、これまでのクレムリンの対外姿勢が明文化されたものということだ。よって、今回の修正案は、プーチン大統領の国内での支持者に対して、「ロシアは欧米に対して断固と立ちはだかる」という明確なメッセージとなっている。
これら一連の修正項目は、プーチン氏の最側近であるウラジスラフ・スルコフ氏が提唱する「主権民主主義」という概念に基づく可能性が非常に高い。このイデオロギーの基本的な考え方は「ロシアの民主主義は主権と文化的伝統に深く根付いたものであり、西側が規定する人権や権力分立といった論理によってロシアの国内問題が介入される謂れはない」というものである。イギリスの民主化促進NGO、オープン・デモクラシーは「それは知的な触発がないイデオロギーで、プロパガンダに過ぎない」と評している。興味深いことにスルコフ氏の「主権民主主義」は、欧米の極右の間で信奉されるヨラム・ハゾニー氏の「ナショナリスト民主主義」とも共鳴しているし、さらにはアメリカのトランプ政権内でもマイク・ポンペオ国務長官や駐独大使から転身したリチャード・グレネル暫定国家情報長官の思想に相通じている。
ここで強調したいのは、プーチン氏の憲法修正は一般に理解されている以上にグローバルな意味合いが大きい、ということだ。4月22日に予定されていた今回の憲法修正の国民投票は、コロナ禍のために延期された。この不可抗力によってプーチン大統領の外交政策にどれほどの遅れが生ずるかは明らかではないが、パワー・ゲームの時代がコロナ危機によって過去になるわけではないことは重ねて主張しておきたい。(おわり)
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