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2020-05-08 00:00
2020年は世界史の転換点となるだろう
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
昨年12月に中国武漢で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は欧州、次いで北米へと津波のように伝播し一部諸国は感染者数がピークアウトしたようだが、今後更に南米、アフリカ、中近東諸国へいかなる形で拡散するか予測できていない。このパンデミックはスペイン風邪以来100年に一度の猛威を振るい、5月7日時点で、世界の感染者375万人、死亡者26万人以上(米125万人、7万人以上)、また世界経済は1930年の世界大恐慌に匹敵する景気後退に陥るとのIMF等の予測が出ている。世界は大戦後75年にして大きな節目に向かっている。このような事態がもたらす課題について以下に整理してみる。
1.大国の興亡と国際秩序の流動化
米ソ2極構造( Pax Russo-Americana)の崩壊とそれに続く米国の一極構造(G1)を経て無極化(G0)を経て、中国の経済的軍事的急速な台頭、中国独立100周年の2049年に向けた超大国家建設の目標(Pax Sinica)とこれを抑えんとする米国による確執の拡大(G2)、トランプ米大統領の自国第一主義、英のEU離脱(Brexit)に見られるグローバリゼーション離反の動きもあり世界秩序は流動化している。
2.国の統治体制の優劣
今次COVID-19抑え込みは強権体制が優れていると中国は自賛しているようであるが、自由民主主義体制か強権独裁体制かの国家統治機構のあり方には国際基準はない。他方、共産主義独裁の中国内部でも習近平強権体制に対する批判が強まっているのと観測もありSNS等のメディアの更なる発達を考慮すれば習近平体制が現在のままで長期化することはあり得ないだろう。
3.貧富格差の拡大
パンデミックは経済的利益を追求するグローバル化(ヒト、モノ、カネの自由な移動)の負の部分を露呈し、強権体制指向を呼び起こした。各国内及び地球規模の格差の拡大による貧困問題解決は人類の共通課題であり、日本のアフリカ諸国に対する協力(TICAD)のような国際的協力、協調、連帯により解決していかなければ、国際社会の安定得られない。
4.第4次産業革命
急速なIT、AI導入による新しい生産体制、生活様式が急速に進展しでいる。他方、このような変革に乗り遅れる国との格差縮小の課題が生じている。更に、人種、宗教、文化、国境を越えた新しい価値観、ヒューマニズムの創造が必要になってきている。
5.2020東京五輪の中止とIOC改革
COVID-19の世界的終息には2年かかるとの予測もあり、経済的にも疲弊した世界に、オリンピック開催がこのパンデミックに対する勝利宣言になるとのアピールは通じない。オーストラリアのように既に不参加を表明している国もある。選手のためにも可及的速やかに中止を英断し、種目ごとのワールドカップ等による代替案を検討すべきであろう。この機に大規模肥大化・ショー化し、プロ化した選手による国威発揚の場とも化している国際オリンピック大会の改革を日本が率先して進めるべきであろう。
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