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2020-05-26 00:00
(連載2)「収束」と「終息」は違う―コロナ対策の出口戦略を考える起点として
桜井 宏之
軍事問題研究会代表
この基準に更に国内外の流行状況、国民生活・国民経済の状況等を総合的に勘案し、基本的対処方針等諮問委員会の意見を聴いて、政府対策本部長(内閣総理大臣)が速やかに決定することになっています。なお基本的対処方針等諮問委員会の正式名称は「新型インフルエンザ等対策有識者会議基本的対処方針等諮問委員会」と言い、いわゆる専門家会議(「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」とは違います。諮問委員会は、特措法第18条第4項及び第5項に基づき、政府対策本部長が、基本的対処方針の制定及び変更に際して、「あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない」とする学識経験者のことです。一方専門家会議は、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催について」に基づき、「新型コロナウイルス感染症対策本部の下、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行う」もので、法令上の根拠はありません。また緊急事態宣言解除宣言に関して政府に対して意見を述べる権限を有していません。諮問委員会と専門家会議はメンバーが重複しているため、混同されて報じられることが散見されますが、政府における位置付けは完全に異なります。
そこで現在の日本の状況は上記の基準と照らし合わせても、「小康期」(終息)とは言えないことについては異論はないと思います。ところが終息を迎えるまで接触8割削減を続けていては日本経済(少なくとも庶民生活)が窒息してしまいます。なぜなら接触8割削減の対策は、感染の拡大を抑えられますが、感染しないため国民が免疫を獲得できないためです。免疫を獲得するためには、感染から回復するか、ワクチンを接種するかの二択しかありません。しかしワクチンの開発には最低でも1年かかると言われており、この間ずっと商売や仕事を自粛し続けては、生活が立ち行かなくなることが庶民であれば肌感覚として分かります(残念ながらメディアに登場する学者先生達はこの辺りの庶民生活の実情が理解できないようです)。
従って、この危険を回避するために現状では、医療提供のキャパシティの範囲内に収まる程度に感染者数を抑えつつ、経済活動を行うしかないわけです(政府行動計画の4頁にその辺りを説明した概念図が掲載されています)。この点については、さすがに政府は理解しており、基本的対処方針(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kihon_h_0521.pdf)では、「(5) 経済・雇用対策」の項において、「感染拡大を防止し、事態の早期収束に全力で取り組むとともに、雇用の維持、事業の継続、生活の下支えに万全を期す」と記しています。つまり経済・雇用のためには終息ではなく、当面は収束を目指すとしているわけです(なお基本的対処方針では終息は使われていません)。
東大大学院の上記知見に従えば、収束後に経済活動を再開すれば人的接触が増えるので、感染が増加することは間違いありません。政府は緊急事態宣言解除後に感染が再び増加すれば、改めて宣言を行うとの認識を示していますので、今後は解除~感染増加~宣言のサイクルが繰り返されることを覚悟した方が良いでしょう。こうした現状の中、出口戦略を模索する上で一番の問題は、今回の対策の基本となるはずの政府行動計画が示す5段階のうち現状はどの段階にあるのか、政府が明らかにしない点です。今どこに自分たちがいるのかが分からなければ、出口について議論のしようがないはずです。(おわり)
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