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2020-05-28 00:00
(連載2)新型コロナで問われる「便宜置籍船」の正当性
山崎 正晴
危機管理コンサルタント
パンデミックの発生を受け、世界各国で米国同様の措置がとられる中、大半のクルーズ船は、様々なルートで寄港希望国政府と交渉を行い、乗客の下船を4月初旬までに終えている。2月3日に横浜港に着岸したクルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」もその中のひとつだ。この船は船籍が英国で運航会社が米国と、ともに友好国であったこともあり、日本政府は乗客乗員全員の段階的下船を認め、712人の感染者の検査と治療は国費負担で行った。
しかし、このような対応はごくまれで、大半のクルーズ船は、乗客を下船させた後、乗組員を乗せたまま港を離れている。本来であれば、クルーズ会社が乗組員全員を下船させ帰国させるべきところだが、航空機のチャーターや上陸時の移送などの手間と高額な費用負担を嫌って、多くのクルーズ船が、乗組員を乗せたまま海を漂っている。
マイアミヘラルド紙の調べによると、2ヶ月以上船内で閉塞状態に置かれた結果、少なくとも578人の乗組員が新型コロナに感染、内7人が死亡、自殺者も出ている。4月末、ギリシャ沖に錨泊中のバハマ船籍のクルーズ船「ジュエル・オブ・ザ・シーズ」からポーランド人の乗組員が海中に飛び込み行方不明となった。5月10日には、オランダのロッテルダム沖に錨泊中のバーミューダ船籍のクルーズ船「リーガル・プリンセス」のウクライナ人乗組員(39歳)が本船舷側から海中に飛び込み死亡している。
5月11日付の「Defense & Security Monitor」誌によれば、今回乗組員の本国送還を渋っているクルーズ船の大半は「便宜置籍船」で、その実態オーナーは先進国の海運会社だ。米国、英国、オランダ、日本など伝統的海運国に籍を置く船は、今回のような非常時に旗国政府からの支援が期待できる。その一方で、乗組員の不当な取り扱いは法律で厳しく規制されている。それに対し、便宜置籍船では、法規制は緩やかだが、経済小国である旗国政府からの支援はほとんど期待できない。その結果被害を受けるのは、常に弱者である乗組員達だ。これまで、経営上の「便宜=Convenience」のために使われてきた「便宜置籍船」の正当性が今問われている。(おわり)
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