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2020-05-31 00:00
緊急事態宣言は解除されど緊急事態措置は続くという矛盾
桜井 宏之
軍事問題研究会 代表
5月25日に「新型コロナ」緊急事態宣言が解除されました。それにもかかわらず政府は緊急事態措置を継続させています。両者は明らかに矛盾しています。
令和2年5月25日付『官報』特別号外(第68号)
(以下『官報』。無料閲覧期間:2020年6月23日まで。)に公示された緊急事態解除宣言には、「緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認めるため」、緊急事態終了を宣言するとうたわれています。ところがその次に公示されている「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(以下「基本的対処方針」)には、「9) その他共通的事項等」の項目で「特定都道府県(引用者注:緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県のこと)は、地域の特性に応じた実効性のある緊急事態措置を講じる」(『官報』8頁)とあるのです。
政府は、「緊急事態措置を実施する必要がなくなった」から解除宣言をしたはずなのに、都道府県に対しては引き続き緊急事態措置を講じろというわけです。なお解除宣言により緊急事態宣言の対象区域も消滅したので、法令上は「特定都道府県」は存在しないはずです。このような支離滅裂な政府の指示に誰も(特に法律の専門家が)疑問の声を上げないのはどういうわけなのでしょうか。基本的対処方針では、緊急事態措置の1つとして、クラスターが発生するおそれのあるイベント等については、「
新型インフルエンザ等対策特別措置法
」(以下「特措法」。法の一部改正により同法はコロナ対策にも適用される。)第24条第9項及び第45条第2項等の規定に基づき、「開催の自粛の要請等を行う」ことを「特定都道府県」に求めています(『官報』6頁)。
確かに特措法第45条第2項は、「特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、(中略)当該特定都道府県知事が定める期間において、(中略)当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる」と定めています。ただしこの要請は「緊急事態において」できるものであり、特措法第32条の書きぶりを見れば、緊急事態宣言の期間と理解すべきと考えます。この点に関しては、「特措法」第6条に基づき政府が事前に作成していた「
新型インフルエンザ等対策政府行動計画
」を踏まえ、関係者省庁の役割分担等を示した「
新型インフルエンザ等対策ガイドライン
」が以下の通り記述していますので、「緊急事態において」とは緊急事態宣言の期間であると、政府も解釈しているものと思われます。
特定都道府県知事は、緊急事態宣言がされている場合において、特措法第45条第2項に基づき、期間を定めて、学校、社会福祉施設、興行場等多数の者が利用する施設の管理者又はそれらの施設を使用して催物を開催する者に対し、施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止の措置を講ずるよう要請することができる。(74頁)特措法第45条第2項等の解釈がこの通りであれば、緊急事態宣言が解除された現在もライブハウスやカラオケの営業自粛を期限を示すことなく要請している東京都は(「
東京都ロードマップ
」表紙から8枚目。)、特措法に違反していると言えるでしょう。
一方、ライブハウスやカラオケも含む全業種の営業再開(時短営業)を認めた神奈川県は、感染予防の見地からの批判を受けていますが、特措法の解釈の見地からは正しい措置と言えます。政府が今回、緊急事態宣言を解除したことには疑問を感じざるを得ません。「特定都道府県」が「実効性のある緊急事態措置を講じる」必要があるのであれば、宣言を継続するのが特措法の趣旨です。自粛緩和に関しては、宣言を解除しなくとも、知事の裁量でいくらでも可能なはずです。そして政府が緊急事態宣言を解除したことにより、現在は法令の根拠なしに国民の権利が制限されている事態に陥っています。しかしその現実に当の国民が気付いていないことを筆者は憂う次第です。
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