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2020-06-05 00:00
(連載2)新型コロナ禍に非伝統的安全保障の多面性を見る
武田 悠基
日本国際フォーラム研究員
他方で、一部の権威主義国家において、非伝統的安全保障問題への取組は、自国の「伝統的」安全保障への関心を巧みにオブラートに包む「隠れ蓑」のような役割を果たすことも事実である。実際、この10年ほどの間、急速な成長を見せたある権威主義国家は、非伝統的安全保障への取組と銘打って、積極的に国際協力を勧め、またその分野に関する研究を深めてきている。そうした取組が、非伝統的安全保障問題の実質的な改善や解決につながれば問題ない。
しかし実際には、名目的な「国際貢献」の既成事実化を通じて自国の圧政を正当化したり、あるいは自国の体制に向けられた批判をうまくかわ(そうと)したりしているケースが見られる。現下のコロナ禍でも、そうした傾向が一部の国で顕著であるのは各種の報道が示すとおりである。「ノン・トラディッショナル・セキュリティー」なる概念が国際世論のなかに普及・定着してきた背景には、権威主義国家のそうした「現状に対する挑戦」の狙いも秘められていると考えるのは穿ちすぎだろうか。そうでなければ、権威主義国家にとって、国際協力を推進する動機は一体何であろうか。
そこで、日本の課題である。日本は戦後久しく、伝統的安全保障問題からも非伝統的安全保障問題からも直接的には甚大な被害を受けずに済んできた幸運な国家であったといえる。もちろん、その背後には様々なかたちで歴年の備えと関係者の並々ならぬ努力があったわけだが、その意味では、今回の新型コロナ禍は戦後最大の多面的脅威であるかもしれない。我が国は憲法上、独特の行動の制約を強いられているが、そうした事情とは無関係に、世界では伝統的安全保障問題も非伝統的安全保障問題もいつなんどき活性化するかわからない。そうした事態にどう備えるべきか、今回の事態をよい教訓としてより一層具体的に考えていく必要がある。
他方、日本がこれまで行ってきた地球規模的課題、例えば環境分野や保険衛生分野における各種の海外支援は、世界各国から高く評価されてきている。これらはまさに非伝統的安全保障問題の芽を摘む支援である。その先見性や知見・経験を活かして、日本は「伝統的」であれ「非伝統的」であれ、さまざまな安全保障上のグローバル課題をめぐる国際的な議論を主導し、また実効性ある国際貢献を行っていくことが、ひいては日本を守る能動的な施策になろう。(おわり)
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