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2020-06-19 00:00
黒人描写に見るNHKの米国認識のいびつさ
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「NHKのニュース番組『これでわかった!世界のいま』の公式ツイッターアカウントが、米国の抗議デモについて「背景には黒人と白人の貧富の格差がある」としたアニメ動画を投稿し、その説明や黒人の描き方について『差別を助長している』と批判が集まっている」(2020/06/10毎日新聞)。6月7日午後6時、散歩から帰ってきて筆者もこの番組を見ていた。そして大いに違和感を覚えた。
まず、ミネソタ州ミネアポリスでの警官による黒人殺害事件の説明から始めて、その後全米各地で発生した公民権デモの様子を映写した後に、特派員の解説を入れて人種差別の説明だったが、そこで黒人の方がピストルなど武器所有率がはるかに高いことから、パトロールの白人警察官は何時何処から発砲されるか分からないという恐怖を常に感じていることが事件の底辺にあるという説明。ある意味、そうかも知れないと思わせる説明だが、具体的にこの事件の解説としてこれをここに入れる必要は無かったのではないか?
次に、登場する黒人の筋骨隆々としたイラストと彼の怒りの形相のすさまじさ、この番組になぜか毎回登場する海賊風の男のまがまがしい解説とが、一層黒人恐怖を強調しているように見えたのである。冒頭の毎日新聞記事では林香里・東京大教授の感想として「まるで『黒人=暴力』とするかのような説明やデモの『暴徒化』という側面を強調していた。(中略)銃を持つのは黒人だけではないし、デモのほとんどは憲法に保障された抗議活動だ。NHKは米国をこれほど理解していないのかと衝撃を受けた」と語ったとあった(同上)。同感である。
米国特派員という出世コースの外信スタッフは、主任務であるホワイトハウスの動向ばかり注視しているのだろう。常日頃、無自覚に白人エスタブリッシュメントの論理にどっぷりと浸かっているからか、その視線が白人目線になっていたのではないかと番組を見ていてふっとそんな気分におかされたのであった。やはりここは、公民権の拡大という「歴史の進歩」の方向に沿う姿勢や視座が有るべきだと筆者は思ったのである。「みなさまのNHK」がどんどん「みなさま」から遠退いていくようだ。なお、06月14日、普段ジーパン姿の担当アナと担当ディレクターが背広にネクタイで同番組に現れ、「謝罪」にこれつとめていた。NHKの今後の番組作りが進歩的な感受性に基づくようになることを期待したい。
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