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2020-06-23 00:00
(連載1)北朝鮮は何を狙っているのか
松川 るい
参議院議員
今月16日、北朝鮮が、南北融和の象徴とも言うべき南北連絡事務所を爆破した。南北連絡事務所は、2018年4月の南北首脳会談で合意されて建設されたもので、文在寅政権にとっては非常なる打撃だ。北朝鮮政府が金与正氏の主導で行われたことを人民にわかるように宣伝しているのは、金正恩の後継者たりうる資格を示そうとしているからだろう。そして、そうだとすれば、何らかの事情でその必要が生じているということもうかがわせるものである。
まず、すごーくスタンダードに素直に考えてみることにする。今回の一連の行動で明らかなことは、3つだ。①北朝鮮は文在寅政権に対して怒っている。「北朝鮮文学」はいつものことだが、今回の一連の談話は本当に口汚く激しい。一見清楚で可憐な与正氏が「獣にも劣る人間のくずが」とか言うところを想像すると凄みを感じる。②北朝鮮は、対南関係を対立モードに変更し緊張関係を作り出そうとしている。③金与正氏の地位を高めようとしている。それも、軍事関係を含む強硬措置についても主導できる人物であることを宣伝しようという意図がうかがわれる。これは、わざわざ金与正談話という形で労働新聞(北の公的プロパガンダ紙)に出し、しかも、広報官にわざわざ連日後追い記事も出させているので意図は明らかである
爆破の動機として現時点で立てられる仮説は2つだ。
仮説1:国内要因
北朝鮮の経済は相当逼迫している。国連制裁がかかったままに、コロナ危機で9割の貿易関係にある中国との国境が閉ざされてしまったからだ。また、「コロナ感染者ゼロ」が公式発表ではあるが、実際には感染者は発生しており、医療も厳しい状況にあることも予想される。200万人死んだともいわれる「苦難の行軍」を90年代に経験した北朝鮮の政権が一般人民からの危機を感じるかといえばそうでもないとは思うが、国連制裁で外貨が獲得できず、そこに関連する金王朝支持層のハイクラスな人々の不満が高まっていることは予想に難くないだろう。とすれば、北朝鮮が直面している困難を韓国に責任転嫁するために対外強硬路線を取ったということはあり得る(実際に、90年代の「苦難の行軍」の後、父である金正日委員長が先軍政治に舵を切った例がある)。また、金正恩の健康問題があるとすれば、自分が万一の時に金与正を後継者として移行できる体制の準備をしておく必要を金正恩が感じたことはあり得る。信頼できる唯一の人間である金与正の地位を上げて自身の立場を強化する必要性を感じているのだろう。
仮説2:瀬戸際外交(仮説1.と二律背反ではない)
もう一つは、米国を念頭においた国際社会に対し危機を作り出すことにより、北朝鮮との制裁解除を含むディールを引き出すことを狙っている可能性である。北朝鮮は、第一次核危機(93年NPT脱退)の後は、日米韓から軽水炉支援を引き出し、第二次核危機(ウラン濃縮疑惑)の後は、六か国協議と制裁解除と支援に持ち込んだという、「成功体験」がある。昨年2月ハノイでの米朝会談が大失敗に終わって以来、米朝交渉に進展はない。となれば、北朝鮮からすれば、じり貧である。しかも、文在寅政権が対米レバレッジとして全く役立たずと分かったとなれば、現状継続に意味がない以上、核兵器を増産して核保有国としての既成事実を作り、「下駄の雪(北朝鮮が何をしようと文在寅の対北融和路線は変わることはないと見切っているので、対南関係を考慮する必要がない)」の文在寅政権の韓国との間に緊張関係を作り出すしかないと考えたのだろう。それによって、危機の回避と引き換えに米国から制裁解除の譲歩を引き出すということだ。成功体験の再現ということでスタンダートな発想ともいえる。(つづく)
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