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2020-07-13 00:00
尖閣で中国に生ぬるい安倍政権
鍋嶋 敬三
評論家
尖閣諸島(沖縄県石垣市)領海周辺の接続水域に中国海警局の公船の入域が7月12日現在で連続90日を記録、三ヶ月間もの最長連続記録を更新中である。領海侵犯も4月以降も毎月2~3回に及び、7月には最長時間を記録した。安倍晋三政権は「極めて遺憾」(菅義秀官房長官)、「中国に外交ルートで繰り返し厳重に抗議している」(茂木敏充外相)と言う。しかし、無法を続ける中国には「馬耳東風」である。安倍首相は本気で日本の領土を守ろうとしているのか?香港に対する国家安全維持法の施行に対して米欧諸国は制裁など具体的な措置を次々に打ち出した。対中外交で日本との差は明白である。米国のトランプ政権は香港人民民主主義法(2019年11月成立)などの法整備を進めて対中圧力を強めた。英国が英旅券を持つ香港人に5年間の滞在を認め、英連邦(コモンウェルス)加盟のオーストラリアやカナダは犯罪人引き渡し条約の停止を決めた。
習近平中国指導部の政策が自由で民主主義的な制度にとって危険だという認識が米欧に浸透したからだ。トランプ政権は5月に「中国に対する米国の戦略的アプローチ(USSAPRC)」を公表している。その中で「安全保障に対する挑戦」として、北京は「紛争を平和的な対話で解決」との美辞麗句とは逆に黄海、東シナ海、南シナ海、台湾海峡などで挑発的、威圧的な軍事的または準軍事的な活動をしている、と指摘した。尖閣諸島への連続的な長期の中国公船の領海侵犯や入域はまさにこれだ。中国の「尖閣キャンペーン」は単なる威嚇行動ではない。中国は7月初旬にかけて、人民解放軍が南シナ海、東シナ海、黄海の三海域で同時演習したと公表した。中国大陸側から俯瞰すると、太平洋への進出上、大陸を取り囲む三つの海の戦略的重要性に気付く。尖閣はその戦略の核の一つである。
中国の海馨局は日本の海上保安庁に当たるが、2018年に中央軍事委員会の指揮下に入った。戦時には軍組織の一部として軍事行動に加わる。尖閣周辺に1万トン級や機関砲を装備した船を配備しているのもこのためだ。5月に領海に侵入して日本漁船を追尾した際には中国外務省の報道官が「中国領海内で操業した」と論難、まさに居直り強盗の論法である。6月に石垣市が尖閣諸島の字名を変更した際には「中国の領土主権に対する重大な挑発だ」と声高に主張した。中国の無法ぶりに対する安倍内閣の態度が煮え切らない。「韓国軍による竹島軍事訓練に対する抗議」と題する外務省の6月5日付け「報道発表」がある。日本が実効支配できていないにもかかわらず東京とソウルで「強く抗議した」とある。その抗議は正当だ。しかし、日本が実効支配する尖閣諸島への度重なる領海侵犯や入域に抗議したとの「発表」を最近は見ない。
茂木外相は記者会見(6月23日)で「中国公船による接続水域及び領海侵入の継続は極めて遺憾である。外交ルートを通じて繰り返し厳重に抗議している。中国側の行動を強く求めている」と述べた。その後も中国は領海侵犯を平然と繰り返している。このような中国に対して7月10日には、茂木外相から中国内陸部の豪雨被害について王毅国務委員兼外相宛に「お見舞いメッセージの発出」が発表された。「犠牲者と家族に心から哀悼の意を表する」のはいいが、それも「侵略的行動には目をつむって」ということなのか、唖然とした。7月7日の会見で外相は「首脳会談などハイレベルの機会を活用、しっかり主張して懸案を一つ一つ解決して中国側の前向きの対応を強く求めていく基本方針に変わりはない」と語った。だが首脳や閣僚レベルの会談で、尖閣への侵略的行動を止めるよう面と向かって要求したという発表を目にしたことはない。中国の姿勢が変わらない限り習近平国家主席の国賓訪日はあり得ないと明確に伝えたのであろうか?中国側の言動を見る限り、日本の形式的な「抗議」は痛くもかゆくもないのだ。口だけで具体的な行動に出ない日本が中国に侮られている間は国土や国民の安全は全うできないのである。
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