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2020-07-15 00:00
(連載2)敵基地攻撃能力の可否と課題
船田 元
衆議院議員
次に要件②の「武器使用以外に適切な他の手段がない」という点だが、我が国が直接敵基地を叩かなくても、米軍に代わりに叩いてもらうシナリオの方が可能性は高い。またその方が日米安保条約の定める役割分担、すなわちアメリカは「矛」、日本は「盾」に徹することに沿うものだ。敵基地攻撃能力という「矛」を我が国が持つことは、この役割分担を大きく変更することであり、日米安保体制の再定義が必要となるだろう。
要件③の「必要最小限の武器使用」についてはどうか。現在の自衛隊の装備を持ってしても、未だ敵基地攻撃の能力を保有するに至っていないが、今後空自のF15戦闘機やF35A戦闘機に搭載する対艦・対地用ミサイルの装備や、トマホークに匹敵する巡航ミサイル導入などを予定しており、自衛隊は射程距離500キロから900キロの「飛び道具」を装備しようとしている。このような敵基地攻撃能力を保有するための攻撃的兵器を装備するには、「攻撃的兵器の保有は自衛のための最小限度を超える」としてきた政府見解を変更する必要がある。実際にこれを使用するか、その可能性が高いということになると、要件③も見直さざるを得なくなるのではないか。
なお敵基地攻撃を可能にするには、武器の保有だけでは済まない。情報収集、分析、偵察、レーダー撹乱などの能力の向上が必要となる。日本独自の早期警戒衛星の導入や電子偵察機の増勢、敵の防空能力を無力化させる統合監視目標攻撃レーダー・システムの整備が欠かせない。これらのことを考えると、相当米軍の力を借りなければならないだろう。だからこそ本来は米軍の攻撃能力に委ねるべき分野なのである。
そして最後に、我が国が敵基地攻撃能力を持つということは、例えそれが北朝鮮のみを想定していると対外的に説明しても、中国やロシアの対日懸念が増大することは必死であり、一定の外交的摩擦を覚悟しなければならない。我々は敵基地攻撃の功罪や費用対効果をきちんと分析した上で、導入の可否を決めるべきである。そして導入となれば武器使用の3要件の見直しにとどまらず、現行憲法9条の解釈変更や改憲も視野に入れながら、慎重にも慎重な議論を行わなければならない。(おわり)
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