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2020-07-28 00:00
(連載1)何故プーチン政権の延命か――利権構造温存の「裏技」
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
さる7月1日に改憲の是非を問う「国民投票」が行われた。真の目的は一つ。2024年に任期を終え、憲法上大統領選に立候補できないプーチン大統領の任期延長だ。「プーチン疲れ」の国民(支持率は過去最低に落ちている)にそれを認めさせるため、彼は手の込んだ改憲のための「裏技」を実行した。まず、1月15日の年次教書演説で、改憲構想を打ち出したが、その時は大統領の任期問題は伏せた。ただ、直後にメドベジェフ首相が辞任を発表、無名のミシュスチン連邦税務庁長官が首相に指名されたので、尋常でない改憲だと予想された。国民の不満の原因である経済悪化の責任をメドベジェフに負わせプーチン政権の支持率を上げる魂胆が見え見えだったからだ。
大統領の任期延長問題が表にストレートに出たのは、3月10日。下院で国民的人気のV・テレシコワ議員(元宇宙飛行士)の突然の提案である。彼女は「大統領経験者に対しては現行憲法の制限を適用せず、次の大統領選ではこれまでの就任回数を数えない」と具体的な憲法改定を提案した。これにより、プーチンは24年の大統領選に立候補し、さらに2期(12年)大統領を務めることが可能となる。もちろんテレシコワ案は大統領の意向を受けての提案だ。こうして「国民投票」が4月22日に実施されることになった。この「国民投票」は憲法の定める正規の国民投票ではないので、投票率とは関係なく投票者の過半数の賛成で改憲承認となる。コロナ問題でこの「国民投票」は7月1日に延期された。コロナ問題はさらに深刻になっているのだが、コロナ禍の中での投票を強行するために、6月25日から事前投票を可能とし、一部では電子投票も認めた。そして投票率を高めるため6月24日に、5月9日から延期された愛国主義高揚の「戦勝パレード」を実施した。その直前の6月21日にプーチンは、「憲法が許せば、私が(次期大統領選で)立候補する可能性を排除しない。様子を見よう、やがてはっきりするだろう」と、事実上立候補を宣言した。
プーチンの顕著な「裏技」は、改憲で彼の任期延期が可能になることを、極力表に出ないようにしていることだ。プーチン支持者でも今日では「プーチン疲れ」の気分が強く、タンデム政権も含めて24年のプーチン時代が更に12年続くことは支持していない。しかも、改憲により事実上は皇帝と同じく「大統領終身制」になるとの見方も強い。今回これだけ簡単に憲法規定を変えるのなら、将来もまた同じことをするだろうと考えるからだ。
だから選挙管理委員会の改憲を説明するパンフレットには、大統領の任期延長が可能となることは書かれていない。また改憲のための国民投票は大々的に宣伝されているが、改憲の目玉としてテレビや街頭広告で国民に宣伝されているのは、国民受けする年金制度の改革(年金額を毎年見直す)や、社会保障、家庭保護、子ども支援など様々な福祉政策や愛国心に訴える領土保全などだ。このような細々とした福祉政策は、本来は憲法でなく、関係法規に述べられることである。つまり、国民投票で支持率を上げるために、本命の大統領任期延長は隠して、国民受けしそうな装飾部分だけを拡大して宣伝しているのである。(つづく)
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