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2020-07-30 00:00
「専守防衛」とはそもそも何ぞや:伊藤洋氏の見解に思う
加藤 成一
元弁護士
伊藤洋山梨大学名誉教授の7月22日付「百花斉放」掲載「敵基地攻撃能力の実像を直視せよ」は、「敵基地攻撃能力」の具体的な「危険性」を指摘され、これに反対しておられる。「敵基地攻撃能力」に対しては、日本共産党の志位委員長も6月25日の記者会見で、「すべてのミサイルを一瞬で破壊するのは不可能であり、反撃が来て日本が火の海になる。全く有害だ」(6月27日付「夕刊フジ」配信)と強く反対している。確かに、「敵基地攻撃能力」には「先制攻撃」の側面もあることは否定できない。しかし、日本が敵国に対して先制攻撃能力(「敵基地攻撃能力」)を保有することと、実際に先制攻撃をすることとは、別個の問題である。なぜなら、十分な先制攻撃能力を保有すれば、実際に先制攻撃をしなくても「抑止力」が働くからである。ちなみに、日本防衛の専門家である谷内正太郎前国家安全保障局長も、7月10日自民党のミサイル防衛に関する会合で、「敵基地攻撃能力」に関して、「相手に攻撃を思いとどまらせ、抑止力を強化するため一定の打撃力を持つことは必要」(7月11日付「産経新聞」)と述べておられる。
伊藤氏は、中・ロ・北朝鮮などの核保有国に対して、核武装なしの「敵基地攻撃能力」は抑止力にはならず、先制攻撃はむしろ危険であり、日本に対する核攻撃の正当性を与えると警告される。しかし、中・ロ・北朝鮮に対しては、現在でも米国による核抑止力が働いている。ドイツと同様の米国との「核共有」による核抑止力強化の選択肢もある。したがって、日米同盟による核抑止力が働いている以上は、通常兵器による「敵基地攻撃能力」の保有をしても、敵国の核兵器及び通常兵器による攻撃を惹起するとは必ずしもいえない。
また、これらから導き出される日本が憲法9条を遵守し攻撃型兵器を持たず「専守防衛」に徹すれば、日本の国益を守り、平和を享受できるとの結論は楽観的に過ぎよう。なぜなら、「沖縄」をも狙う、最近の中国による「尖閣危機」一つを見ても、憲法9条の「専守防衛」のみでは日本の防衛が万全でないことは明白だからだ。中国の「尖閣」への侵入を阻止するためにも、力による現状変更を抑止するに足りる「敵基地攻撃能力」の保有は不可欠だ。日米同盟に加え、日本の自主防衛力の強化によってこそ、中国による「尖閣侵略」の実行を抑止できるのである。
最後に、「敵基地攻撃能力」の「合憲性」について付言したい。周知の通り、昭和31年の鳩山一郎内閣の「我が国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つのは憲法の趣旨ではない」との政府答弁以来、日本政府は「敵基地攻撃能力」が「合憲」であるとの憲法解釈で一貫している。のみならず最高裁も「憲法9条は我が国固有の自衛権を放棄したものではなく無防備、無抵抗を定めたものではない」(昭和34年砂川事件最高裁大法廷判決)と判示し、自衛のための防衛力の保有を認めている。「攻撃型兵器」について、たとえば核兵器においては、日本政府は昭和32年岸信介首相の国会答弁以来現在でも一貫して自衛のための保有は必要最小限度に反せず合憲としているのである。
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