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2020-07-31 00:00
米大統領選挙、バイデンリードは話半分に
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
米国の主要紙が大統領選挙情勢について、ミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州などの激戦州の情勢として、白人で大学の学位を持っていない有権者が2016年のトランプ勝利の原動力となったがその層での支持が下がっているなどとしてトランプ大統領の劣勢を指摘している。しかし、私はここで、トランプ大統領に有利な点について考えてみたい。 トランプ大統領の有利な点はやはり現職であるという点と、経済運営に関しては評価が高いという点だ。アメリカでは現在も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害拡大が続いており、新型コロナウイルスに関しては最初の内は「中国の病気」であったものが、現在は南北両アメリカ大陸のアメリカとブラジルが最前線となっている。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年の経済は世界規模で大減速となる。そうした中で、やはり人々の関心は経済に向く。 現状では、有権者の中でも投票率が高く、共和党支持が多い高齢者層で、経済よりも感染対策を優先して欲しいという有権者の数も多く、それが高齢者層のバイデン支持につながっている。特に、激戦州とされるフロリダ州でトランプ大統領支持が下がっているのも、高齢者層のバイデン支持が理由である。フロリダ州は人生である程度以上の成功を収めた高齢者たちが移住して老後を暮らす場所だ。その人たちからすれば、「高齢者が新型コロナウイルスに感染したら死亡するリスクが高い。だから経済再開よりも拡大対策を重視して欲しい」ということになる。
ただ、重要なのは、トランプ大統領の経済運営が有権者の間で評価が高いということだ。新型コロナウイルス感染拡大で減速してしまった「経済を立て直す」ということがこれからの課題である。感染拡大対策(pandemic)と経済再開(reopening)は車の両輪のようなもので、どちらが大き過ぎても小さ過ぎてもうまくいかない。 しかし、経済対策は現在でもやらねばならないし、収束を迎えたら一気に進めねばならないものだ。現在の経済対策と経済再開を本格化させる時期のことを考え「トランプが良いか、バイデンが良いか」ということになれば、トランプ支持が上がってくることは予想される。トランプ大統領はまた選挙までに思い切った経済対策を打ってくることも考えられる。
外交政策では、トランプ大統領の対中国政策を支持する有権者も多い。最近になってマイク・ポンぺオ国務長官が中国に対して強硬な姿勢を示して中国側を動揺させている。激しい言葉遣いで歴代政権の対中国政策を批判している。これはもちろんトランプ大統領の許可を得てのことだが、トランプ大統領としては、ポンぺオが中心の「封じ込め政策派」とキッシンジャーを中心とする「関与政策派」を車の両輪として進めていこうと考えているのだろう。有権者に受けがよい対中国強硬姿勢を見せつつ、こちらが進み過ぎたとなれば引っ込めるという形で手綱を使って制御していくのだ。今回の対中国強硬姿勢は大統領選挙対策という面もあるということだ。 一つ明確に言わねばならないことは、全国規模の世論調査でバイデンがトランプを大量リードしているという報道は話半分で聞いておくべきだということだ。確かにバイデン支持は高まっているという流れはあるし、各種調査がそれを裏付けているが、バイデンが圧勝するということは今の段階ではまだ言えない。アメリカ大統領選挙の情勢をより正確につかむためには、10州程度の激戦州の世論調査の数字を、世論調査自体の誤差も頭に入れながら見ていくことだ。そうすると、現状は接戦といっていい状況とわかる。全米50州とワシントンDCを全て見る必要はもちろんないし、そんなことはできないが、激戦諸州を見ていくことが重要だ。
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