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2020-08-04 00:00
拉致被害者が北朝鮮の混乱した社会で生きているということ
荒木 和博
特定失踪者問題調査会代表
7日29日付の産経新聞1面に掲載された
「『北で日本人7人と接触』解放の米博士 拉致示唆の女性も」
という記事をご覧になられた方もいるでしょう。ソウル支局の桜井紀雄特派員のこのスクープは産経新聞の独自調査によるもので極めて重要な意味を持つものです。証言をしたのは一昨年5月、北朝鮮から解放された韓国系米国人のドンチョル・キム博士です。飛行機から降りてくるのをトランプ大統領が迎えた姿は覚えている方もおられると思います。北朝鮮で事業を行い、東北端の経済特区羅先市の要職にもあったキム氏に接触してきた日本人についての証言です。キム氏には桜井紀雄ソウル特派員が時間を掛けて接触を続け、インタビューを行ってきました。私もご本人と電話でのお話しやメールでのやりとりをしています。本当は4月にも米国に行ってお会いするつもりだったのですが、コロナのおかげでまだ果たせずにいます。
特に重要な点は、日本人拉致被害者が監視つきながら北朝鮮の一般社会に参加していたという話です。これは私自身たびたびその可能性を指摘しておりましたが、それが証言によって裏付けされた形です。たとえば、園田敏子さんは北朝鮮の国境近くで生活していたとの目撃証言や写真が出てきていましたが、同様に平場で北朝鮮の人々と暮らしている多数の拉致被害者がいたという証言はドンチョル・キム博士が初めてです。実際には、平場で北朝鮮の人々に紛れて暮らしながら自分が拉致された人間であるということは公にできずに生きている人が多くいることでしょう。
また、騙されて北朝鮮にやってきたというのも、有本恵子さんらのヨーロッパでの拉致のケース以外では初めての証言だと思います。これまで拉致というと海岸でいきなり工作員に袋詰めにされ、隔離された招待所で暮らすというイメージだったと思いますが、実際は異なるケースが多数あるということです。このような強引な手法での拉致は少数で、実際には日本に住む北朝鮮工作員の協力者がターゲットを調べ上げて、詐欺師よろしく言葉巧みに誘い出し、連れて行ったきり帰さないという手法が多く採られたということが明らかになったという点で重要な意味を持つものと思われます。ただ、騙されて連れて行かれたから拉致ではないなんていう解釈は間違いです。騙して連れて行くのも含めて「拉致」ですので強調しておきます。
さらに拉致被害者が一般社会に出ているということは、監視はあるにしても一般の北朝鮮の人々と同様の処遇ということです。そうなると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19))の北朝鮮への拡大(北朝鮮当局は開城工業地区の韓国人を経由して北朝鮮に感染が広がったと主張して最近同地を封鎖したとのことですが、実際にはもっと前から北朝鮮国内で感染を広げていたと思われます)による健康リスクも北朝鮮人民と同様に受けているということです。また、経済制裁によって北朝鮮は極端に経済状況が悪化し、平壌市民の配給も滞るなど1990年代の「苦難の行軍」に匹敵する打撃を受けているというのですから現地で生き抜く拉致被害者のことが心配でなりません。北朝鮮が混乱している今、予備役ブルーリボンの会のパンフレットにある「救いますか、それとも見捨てますか」という言葉が差し迫ったリアルであるということを一人でも多くの方にご理解いただき、北朝鮮問題に関心を寄せていただきたいと思います。
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