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2007-08-30 00:00
「歴史問題の総括」について考えること
玉木享
大学教授
大学院生の竹内法和さんの「歴史問題の総括を急げ」(本欄8月24日付け投稿384号)は、重要なご指摘だと思いますが、その内容や方法については十分慎重な検討が必要であると考えます。適切な決着が早期にできればもちろん良いのですが、実際には早期の決着を優先すれば、中国や韓国の主張に沿った事実に沿わないような方向での決着とならざるを得ないのではないでしょうか。
このことは、たとえば韓国国内で公刊された『親日派のための弁明』という著書が、実証的に歴史を研究した成果であるにもかかわらず、当局によって「青少年有害図書」に指定され、国民の目から排除されていること、「挺身隊」が「慰安婦」を意味する言葉として使われているという明らかな誤用が放置されていること、などの事実からみても容易に推論されることです。
他方で、日本の謝罪や総括がどのような影響を及ぼすものであるかについては、かつて宮沢総理時代に、日本軍が朝鮮女性を強制的に慰安婦にしたことを認める河野官房長官談話が出されたことを想起する必要があります。この談話については、証拠がないことがその後明らかにされています。しかし、その後の展開は、期待とは逆に、むしろ河野談話それ自体の存在が「従軍慰安婦」の存在したことの証拠とされています。問題は却って混乱し、日本への批判は弱まらず、米国議会からまで非難される事態となっています。謝ることが良い未来をもたらすものではないことが示されています。
また、慰安婦問題などは国際法上すでに賠償責任等については解決済みの問題であり、国際法上の結論を受け入れていないのは日本政府ではなく、むしろ関係他国であるということも認識すべきであると考えます。歴史認識問題の総括に関しては、以上のような点を考慮に入れて、慎重に検討することが必要だと思います。
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