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2020-08-07 00:00
米国との「核共有」を検討せよ
加藤 成一
元弁護士
「核共有」(Nuclear Sharing)とは、核兵器を同盟国と共有する核戦略である。核保有国と核兵器を共有し核兵器の提供を受けて、有事の際にはこれを使用できる体制を整えておくことによって、非核保有国も核抑止力を保有することができる。現在は、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダのEU加盟4か国が米国と「核共有」の関係にある。当該4か国は、米国から核兵器の提供を受けて、自国に核兵器を配備しており、平時は米国が管理しているが、自国に核ミサイルが飛んでくる等の非常事態には迅速に迎撃反撃態勢がとれる体制・システムになっている。これによって、上記4か国は実質的に核保有国に準じる「核抑止力」を保有していることになるのである。
ドイツは、1975年に批准した「核不拡散条約」(NPT)の規定により独自の核兵器を保有していないが、国内に配備された米国の核兵器を米国と共有している。この核共有政策の起源は、かつての西ドイツに核兵器が配備された1950年代末にさかのぼる。ドイツ政府は、加盟する北大西洋条約機構(NATO)の核抑止政策の一環として、核共有政策を現在も維持している。メルケル首相は大量破壊兵器の廃絶を目指す政策を支持しつつも、自国及び自国民の安全と、核政策に関するNATO内におけるドイツ政府の影響力を保持するため、米国との核共有政策を堅持しているのである。この核共有政策により核保有国ロシアに対するドイツの核抑止力は万全と言えよう。
翻って、我が国を取り巻く北東アジアの安全保障環境を見れば、極めて厳しい状況にある。核保有国の北朝鮮や中国の脅威は、非核保有国である我が国の安全保障にとって憂慮すべき事態である。そのうえ中国では、最近、米国に対抗して、核弾頭の数を1000発以上に引き上げるべきとの報道がされている(2020年5月8日付『環球時報』、同5月10日付『多維新聞』)。これは勿論「偉大な中華民族の復興」を掲げる習近平政権の強い意向を受けた記事であろう。
そうしたなか、非核保有国である日本においても、米国との「核共有」を検討すべきだ。なぜなら、日本は日米安保による「拡大核抑止」(核の傘)に依存しているが、「核の傘」の確実性については日米の有識者や安全保障研究者の間でも様々な議論があり、必ずしも万全の抑止力とは言えないからだ。しかし、米国との「核共有」により、米国と共同して直ちに核兵器により迎撃反撃できる体制を構築しておけば、日本の核抑止力は格段に強化される。広島・長崎の悲劇を二度と繰り返さぬため、日本政府・自民党は米国との「核共有」を早急に検討すべきである。
なお、米国との「核共有」は、「自衛のための必要最小限度の核保有は憲法上合憲である」との昭和32年岸内閣以来の日本政府の一貫した立場からしても「合憲」であることは言うまでもない。また、「核共有」はNPT条約1条2条の核保有国と非核保有国相互の核兵器の移譲及び受け入れ禁止条項に違反するとの見解がある。しかし、核兵器の所有権は移転されないこと、核兵器使用及び管理権限は米国側にあること、10条で脱退を認めており戦時にはNPT条約の規制が及ばないことなどから、前記条項には違反しないと解すべきである。
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