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2020-08-18 00:00
米国の同一政権に複数ラインが並立する強み
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
トランプ政権の「強硬な対中姿勢」については、米国のみならず日本でも報道されている。先月末には、マイク・ポンぺオ国務長官が、歴代政権の対中政策、「関与政策」が失敗だったと批判する演説を行った。最近になって、中国のバイトダンス社が所有するティックトック社をめぐり、アメリカ国内でのサービスをマイクロソフト社に売却するか、使用禁止にするかを迫る大統領令を出した。「アメリカが中国と戦おうとしている」「中国が世界から孤立」している中で、中国寄りと見られる発言をすれば、親中派と罵られる風潮がある。しかし、そのような短慮では世界の現状を把握することはできない。
トランプ政権には2つのラインがある。対中強硬派(封じ込め政策派)と対中現実派(関与政策派)だ。トランプ大統領はこの2つを競わせて、どちらかを選ぶこともあり、また、両方の折衷案を採用する場合もある。現在は強硬姿勢を示しておく方が、選挙対策として有利ということもあり、強硬派が目立つようになっている。封じ込め政策派・強硬派はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ピーター・ナヴァロ通商製造政策局委員長であり、関与政策派・現実派は、ジャレッド・クシュナー上級補佐官、スティーヴン・ミュニーシン財務長官などだ。
そして、『ザ・ヒル』誌が8月8日に「ナヴァロ、ミュニーシンがティクトックをめぐり大統領執務室でトランプ大統領の面前で衝突した」とする報道をしてからしばらく経ったあと、アメリカが仲介して、イスラエルとアラブ所長国連邦が国交正常化に向けて動き出すという発表があった。トランプ大統領がこの発表を行う際、後ろに控えていたのは、クシュナー、ミュニーシン、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官だった。この案件はこのラインにやらせてうまくいった、ということをトランプ政権は示している。
単純に勇ましいことや激しいことばかりを言っているようでは、国家運営はうまくいかない。それは太平洋戦争直前の日本がまさにそうだった。陸軍を押さえようと、陸軍の言うことを聞き過ぎて、かつ、自らアホのように中国との話し合いの可能性を潰して、ひとりよがりで、「南部仏印まで出て行ってもアメリカは戦争しないよね」と思い込んで、突き進んだら、気づいた時には自分たちの行動と言葉に縛られて、滅亡への途しか残っていない、そんなことになってしまった。常に複数の選択肢を残し、最悪を回避する、これが今の日本でも出来ているか、今の日本の指導者にできるかと言われて、自信を持って「はい、大丈夫」と言える人は多くないだろう。複数のラインを用意する、これはトランプ政権だけではないが、アメリカの強さ、ということになるのだろう。
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