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2020-08-22 00:00
金正恩氏に権限の委譲などできない
荒木 和博
特定失踪者問題調査会代表
韓国の有力紙『朝鮮日報』の日本語版は、20日のネット記事で次のように報じています。「韓国の保守系最大野党『未来統合党』所属で韓国国会情報委員会の野党側幹事を務める河泰慶(ハ・テギョン)議員は20日午後、国会で開かれた情報委の会議の直後、会見を行って『金正恩の動向について委任統治という言葉が出てきた』とし、『金与正が後継者に決まったのではないか』と語った。その上で、委任統治について『金正恩が依然として絶対権力を行使しているが、昔に比べると少しずつ権限を委譲している』と説明した。河議員は『金与正が事実上のナンバー2』とも発言した。また、金正恩の権力移譲の理由については『統治ストレス軽減という観点から』『金正恩の過去9年間の統治で、統治ストレスがかなり高まったかと思う』とし、さらに『第2に、政策失敗時に金正恩に銃弾が飛んでくる、失敗時のリスクがあまりに大きいというところから、責任回避という観点』と伝えた」。
これは、情報は情報委での国家情報院の報告です。今の国家情報院のトップは朴智元という、極めて北朝鮮との繋がりの強い人物です。ある意味石川五右衛門を南町奉行に任命したようなもので、したがってこの報告にも北朝鮮に不利な情報は極力出さないようにして、かなりの嘘が入っていると私は確信しています。だからこそ、それでもなおかつ、こう発表せざるをえなかったのはなぜか考えてみる必要があります。結論から言えば、生きているのか死んでいるのかあるいは重篤なのか元気なのかにかかわらず、「本人がまともに統治できなくなった」と推測できるということです。その場合、権力機構は確実に分裂を起こします。朝鮮半島の文化においては、基本的に権威と権力が一致し、統治者が圧倒的な力を持つことで初めて体制が維持されます。それができなくなった場合、内部はおそらく周辺大国との関係を軸とした派閥対立へと進むはずです。
北に比べればはるかにまともな体制であるはずの南でも、大統領を辞めると自殺したり投獄されたりという不幸な結果になるのは、任期末に近づくと残り時間に比例してリーダーシップ(権威)が低下し、様々な矛盾が噴出するからです。北朝鮮の場合、金日成は1970年代に入って金正日を後継者にしました。そして金正日は、金日成の権力を少しずつ奪い取っていきました。それをもって「権力の委譲」と言えないことはありません。しかし、それは金日成の圧倒的なカリスマのもとで、それを徹底して利用したからできたことです。それをする時間がなかった今の金正恩にはカリスマなどありません。「最高尊厳」などと思っている人間は北朝鮮にもほとんどいないでしょう。
まだ十分な情報があるわけではありませんが、今後公式文書からも読み解けるような内部矛盾が次々と出てくると思います。北朝鮮向けに行っている短波放送「しおかぜ」の日本語・朝鮮語放送でも私が収録しているコーナーで、これについてさらに北朝鮮内部に情報を伝えていきたいと思います。向こうで拉致被害者の方々が「帰ることができるかもしれない」と希望を持ってくれれば事態を動かせるきっかけができます。そうしなければなりません。
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