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2020-08-25 00:00
(連載2)ベラルーシ情勢から比エドゥサ革命を想起する
葛飾 西山
元教員・フリーライター
ルカシェンコ氏が軍を出動させると、事態のイニシアティブは大統領ではなく軍に移るかもしれない。ただかつてのフィリピンのように軍がチハノフスカヤ氏の側に付けば事態は案外早く収束するかもしれない。しかし軍が独自に治安維持の動きを見せると、ロシアの動向を含めて先が全く読めなくなるだろう。事態が混乱すれば「ロシア系住民の安全を守るため」という理由でロシアが軍事介入する余地も出てくるだろう。だがそのような事態だけは避けてほしいところである。
中国は1989年の六四天安門事件では人民解放軍を動員して民衆運動を弾圧して乗り切ったが、あれは個人独裁ではなく、あくまで共産主義国家の統治システムとしての党独裁であったため、人民解放軍が党に逆らうことはなく、関係国も強く対応することはなかった。しかし個人独裁の場合は政権中枢にコンタクトできない勢力が政府・軍内部にいるはずで、こうした勢力が動けば自体は一気に変わる。ルカシェンコ氏が強権発動に頼れば頼るほど自身を窮地に追い込んでゆくことになろう。事態が一気に変わってルカシェンコ氏退陣となればロシアも静観するにとどまり、影響力を及ぼそうとするのはその後の話になるであろう。事態が混迷すれば、ロシアが隣国としてのアドバンテージを生かした治安維持活動に乗り出し、事態を掌握しにかかるかもしれない。
独裁者がその座を追われた場合、末路はみじめなものとなる。1987~88年の韓国民主化において、全斗煥大統領は失脚後、かつての部下で後継指名までした盧泰愚政権によって訴追された。これはまだ良い方で、アラブでは何人かの独裁者が政権から去る潮目は何度かあったものの生命を落とすことになった。ルカシェンコ氏も事ここに及んでは事態の収拾は難しい。塩目を読んでの早期退陣・国外亡命が穏当な収拾策ではなかろうか。外交交渉の展開は局外者には全く読めないが、もしかすると水面下でこの可能性が探られているかもしれない。
かつてわが国で大君・徳川慶喜公が政権の座にしがみつくことなく、反撃の行動を取らず即座に隠居の判断をしたように、ぜひ民衆・国家の安全と自身の権力の座を理性の天秤にかけた上での政治判断を望んでやまない。また関係各国もその協力のための労を惜しんではならない。(おわり)
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