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2007-08-31 00:00
なぜ死刑に賛成なのですか
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
安倍改造内閣で法相に就任した鳩山邦夫氏は「死刑には犯罪の未然防止の効用がある」として、死刑存続の意向を表明した。新任の歴代法相が記者団に必ず訊かれる質問だが、最近では小泉改造内閣の杉浦正健法相が敬虔な仏教徒として死刑廃止論を展開、事務方の突き上げで訂正したものの、在任中は1人も死刑執行を承認せず、筋を通した。
しかし日本では死刑廃止論者は少数派で、世論調査によると国民の75%前後が常に死刑に賛成している。先進国で日本人ほど死刑を当然と思っている国民はいない。1989年の国連総会で「死刑廃止条約」(国際人権規約の第二選択議定書)が採択されたとき、先進国で反対投票をしたのは日本と米国だけだった。米国の反対理由は「死刑の存否は連邦政府でなく州政府の権限だから」というものだったが、日本の理由は「国民の大多数が死刑を支持しているから」というものだった。
冒頭に引用した鳩山法相の犯罪抑止効果論は正しくない。ドイツはじめEU諸国では死刑廃止後も犯罪は増えていないという統計が出ている。8月28日付けの産経新聞「産経抄」も同様だ。名古屋の住宅街で若い女性を残虐な方法で殺したあと、犯人のひとりが「死刑が怖かったから」と警察に電話してきたことをもって「死刑には抑止効果がある」と断じるのは短絡だ。そもそも被害者を殺してしまってから死刑が怖くなって警察に電話しても無意味ではないか。
現在、EU(欧州連合)諸国ではすべて死刑廃止しており、トルコの加盟が難航しているのは、同国がイスラム教国だからではなく、死刑制度があるというのが理由のひとつになっている。死刑廃止は世界の潮流である。アジアでもカンボジア、ネパール、香港、東ティモールにつづいて、韓国、台湾も廃止の方向にある。
死刑廃止の潮流は人権意識の普及と高揚の反映だが、何よりも人が人を裁き、かつ国家の名で人を殺すことに矛盾があるからだ。死刑賛成論者に問う。これまでに一体どれだけの冤罪が存在したかご存じか。戦後だけでも、確実な冤罪が13件、冤罪の疑いの残る事件が11件に達しているのだ。命を奪ったら二度と取り返しはつかないのだ。
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