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2020-09-02 00:00
(連載2)新憲法の「領土割譲禁止」条項に北方領土問題は該当するか
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
作業グループとの会議は相当長時間だったが、会議の冒頭でプーチン氏の方からこの言葉を述べていることが、彼がこの条文をどれだけ重視しているかを示している。そして、彼は領土割譲禁止条項と関連して、国後島の記念碑建立に言及しており、そのことがこの禁止条項に北方領土が該当することを明示している。また、国後島と言わないで「この問題が特別の意味を有しているロシアのある地域」と婉曲的に述べているところに、疑似餌の疑似餌たる所以が表れている。つまり、北方領土は領土割譲禁止条項に当然該当するが、それを直接言ってしまえば、これまで一方では強硬論を述べながら、他方では何とか繋いで来た日本側の期待に水をかけてしまうので、プーチン氏はあえてこのような持って回った表現にしているのである。
これに関連して驚くのは、北方領土問題に長年深く関わり、首相ともこの問題でしばしばコンタクトを取っているとされるわが国の政治家が、北方領土交渉は国境画定の問題であって領土割譲の問題ではなく、新憲法の領土割譲禁止条項の影響は受けない、と述べていることだ。この政治家は、日本政府の首脳や国民に向かって、ロシアの疑似餌を投げているようなものだ。
新憲法に関連して、わが国の多くのマスメディアや政治家、専門家たちは「北方領土返還が遠のいた」とか、平和条約交渉に打撃、といった論を述べた。この問題は、今に始まったことではないので、もっと早い時期に真剣にこの問題を取り上げ、国会でもしっかり討議し、批判すべきことははっきり批判し(自国の対露政策も含め)、国際発信もきちんとすべきだった。
もっと早い時期とは、例えば2005年9月に、プーチン大統領が「第2次大戦の結果南クリル(北方4島)は露領になった」と国営テレビで発言した時とか、2019年6月のシンガポールにおける日露首脳会談で安倍首相が「56年の日ソ共同宣言を基礎にして平和条約交渉を加速する」といった根本的な譲歩の合意を行う前である。北方領土問題に関する自国の「論理」の国際発信量は、ロシア側は日本の十倍以上ではないかと私は見ている。(おわり)
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