ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2020-09-10 00:00
(連載2)ロシア改憲「領土割譲禁止条項」をめぐる袴田茂樹氏の見解に思う
加藤 成一
元弁護士
なぜなら、日露両国政府は、2018年の安倍・プーチン会談において、平和条約の締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す旨を規定した1956年の「日ソ共同宣言」を基礎として平和条約交渉を加速することに合意しているからである。この合意に至った背景には、日露両首脳の交渉の結果、北方四島における日露経済協力関係の進展があったからである。さらに、ロシア側も1956年に両国政府が締結批准した「日ソ共同宣言」の存在を認めており、これが無効であるとの主張はしていない。
そうすると、国際法上はロシア側には日本との平和条約締結を条件とする歯舞・色丹両島の日本への「引き渡し義務」が存在することは明らかであり、ロシア側もこの点は暗黙の裡に認めていると考えられる。さらに、プーチン氏は日本側に領土問題の解決方法として、柔道の「引き分け」を提案したこともあり、その後、ロシア側において領土返還交渉に否定的になったのは、プーチン氏の国内支持率の低下の影響も大きいと言えよう。以上の諸点を考えれば、プーチン氏にはもともと領土返還の意思が全くなかったとは言えないであろう。
今後におけるロシアとの領土交渉で重要なことは、日本政府としては、国際法上有効に存在する「日ソ共同宣言」をあくまでも領土交渉の土台・大前提とし、そのうえで、安倍政権が道筋をつけた日露経済協力関係をさらに深化発展させることである。具体的には、北方四島を日露両国の「経済特区」とし、現地ロシア人の雇用を含め、北方四島への日本企業の進出を促進し、とりわけ、漁業、水産加工業、観光業、ホテル、建設業、貿易業、病院等の多数の日本現地法人の設立運営による北方四島における日露共存共栄体制の構築が重要である。そのための日露共同の法制度や税制度も必要である。
このような日露両国の北方四島における全面的な経済協力関係により、日露両国政府及び日露両国国民の相互理解や相互依存、友好親善関係が発展強化されることは、ロシア政府の方針及びロシア国民の世論に変化をもたらす可能性があり、北方領土問題の解決に有益である。正に「急がば回れ」である。そうすれば、今回のロシア改正憲法における「領土割譲禁止条項」の解釈適用も、今後の日ロ友好親善関係の進展次第では変化し得るからである。前記のロシアによる中国との領土交渉の事例も参考とすべきである。(おわり)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
公益財団法人
日本国際フォーラム