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2020-09-16 00:00
(連載1)安倍政権の対外政策の評価――首相辞任にあたって
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
さる8月28日、安倍晋三首相が突然、辞任の意思を表明した。首相としての通算在職日数も、やはり山口県出身で日露戦争時代の桂太郎首相を超え、連続在職日数も大叔父にあたる佐藤栄作首相をこの数日前に超えた。テレビで辞任表明の記者会見を見たが、プロンプター無しでの会見は、またスピーチよりも質疑応答の時間を多くとった会見は、本音を語ろうとする姿勢が表れて、良かったと思う。任期終了前の辞任会見という特殊事情だけでなく、病身という状況下の会見ゆえか、やや沈痛な表情でのかなり率直な私見の表明だった。病気とは言いながら、一時間の記者会見も充分こなせる状態で、「国政が最も緊迫した状況下で誤った判断を下す恐れがある」との理由での辞任も、引き際が立派と言える。もちろんこれは後継者のことも含め政治的計算熟慮の上であることは当然だろうが。
記者からの質問には、首相が最も意欲を示した憲法改正、日露平和条約締結、北朝鮮による拉致被害者問題などもあったが、残念ながら安倍首相が外交政策で最も力を入れた対露政策、特に平和条約締結問題については、憲法改正などと共に「解決出来なくて痛恨の極み」という表現だけで、解決出来なかった理由など首相の立場としての具体的な見解が聞けなかったのは残念である。以下、国際政治、ロシア問題の専門家として、安倍政権の対外政策を振り返って、簡単に私見を述べたい。
対外政策全般の評価としては、筆者は安倍首相の政策は相当高く評価している。それは、地球俯瞰外交として、どの首相よりも多くの国に出かけて絆を深めたからではない。「全方位外交」「八方美人」が必ずしも良いとは限らないからだ。では、何を評価しているのか。それは、G7の中でも長老格として、国際政治における日本の存在感を強めたからである。
他の時代と比較してみよう。1970-80年代は『Japan as Number One: Lessons for America』(1979)が示しているように、経済的には日本は米国をも脅かすような強力な大国になった。しかし当時でも政治的には日本の国際的な存在感は、経済力とは全く不釣り合いに小さかった。その後も、日本の首相は短期間で次々交代して、国際的にもほとんど知られず相手にされなかった。発展途上国や国連、国際機関が日本を重視したのは、その経済力、資金力ゆえだった。ただ1990年代初めのバブル経済崩壊後の「失われた20年」以後は、経済的には日本は以前とは正反対に、「反面教師」と国際的にみなされる時代がやって来た。そのような時代にもかかわらず、安倍首相は国際社会で長老としての相当の発言力と存在感を示した。このことは正当に評価して良いと思う。(つづく)
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