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2020-10-07 00:00
ナゴルノカラバフ紛争、戦闘拡大の一方か
飯島 一孝
ジャーナリスト
旧ソ連南部のアゼルバイジャンとアルメニアが領有権を争っているナゴルノカラバフ自治州で9月下旬、軍事衝突が起き、民間人を含む死者数が100人を超えた。両国とも戒厳令を敷き、軍隊を動員していて1994年の停戦以来、最大級の衝突になりつつある。両国と友好関係にあるロシアが戦闘停止を呼びかけているが、アゼルバイジャンの友好国、トルコも加わり、戦闘はさらに拡大する勢いだ。
今回の衝突は9月27日朝始まったが、原因ははっきりしない。アゼルバイジャン、アルメニアの双方が「相手が先に攻撃してきた」と主張しているからだ。今回の戦闘は今年7月、アゼルバイジャン北西部のトブス周辺で起き、十数人が死亡したのが始まりだ。これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は「アルメニアが新たな戦争の準備をしてる」と非難、緊張が続いていた。
そもそも両国の紛争はソ連時代末期の1988年に始まり、それ以降、紛争が続いている。ナゴルノカラバフ自治州はアゼルバイジャン共和国内にあるが、多数派を占めるアルメニア人住民がアルメニア共和国への編入を求めたのがきっかけだった。それがアゼルバイジャンとアルメニアの国家同士の紛争に発展し、約2万人の死者がでた。ソ連崩壊後の94年にようやく停戦したが、その後はアルメニアが実効支配している。今回はアルメニア側が積極的で戦闘が始まった27日、パシニャン首相がいち早くナゴルノカラバフの独立を承認する可能性を公式に言明した。これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領も「アゼルバイジャン領の(アルメニアによる)占領を終わらせる」と失地回復への意欲を示した。このため両国とも本気で領土紛争の武力解決を目指して動いていると言えそうだ。
これに対し、ロシアのラブロフ外相は27日、両国やトルコの外相と相次いで電話会談を行い、戦闘停止を呼びかけた。さらに、プーチン大統領もロシア主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)に加盟するアルメニアのパシニャン首相と電話会談を行い、戦闘激化を防ぐよう要請した。だが、トルコ軍のF16戦闘機が29日、アルメニア軍のスホイ25戦闘機を撃墜、パイロットが死亡したことから、軍事衝突が拡大している。このため国連安全保障理事会は29日、非公式に協議し、議長国が武力行使を非難する談話を発表するなど、波紋が広がっている。今後、戦闘拡大防止に向け、国際社会がどう動くかに注目が集まっている。
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