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2007-09-03 00:00
ふたたびテロ特措法延長問題を考える
角田勝彦
団体役員・元大使
安倍新内閣が発足した。早くもカネの問題で遠藤農相(及び坂本外務政務官)が辞任するようで、次期国会での民主党の攻勢はいっそう元気付こう。そこでテロ特措法の延長問題である。日米同盟が大事だという認識では一致があるから、最後には知恵が出てくるだろう。最悪の場合、つまり11月1日の期限が過ぎ給油などがダメになったからといって、直ちに自衛艦は戻ってこいということにもなるまい。与野党は対話を尽くせと言う私の主張に変わりない。国会以前にもマスコミで与野党の討議が行われているのは喜ばしい。国民の国際関係への関心が高まる一因になれば有難い。
テレビ討議などから感じたことを、2、3、とりあえず指摘したい。小泉前総理は、2001年9月12日夜、米国が9・11テロへの報復攻撃に踏み切った場合、全面的に支持する意向を表明したが、これは国連安保理(9月12日付決議1368など)、国連総会、NATO、及び中国、ロシアを含むほとんどの国と同じ反応であった。10月29日には、米軍などへの自衛隊の広範囲の後方支援を可能にするテロ特措法など3法が成立した。
米国は、9月20日、容疑者ビン・ラディンをかくまっているとして、アフガニスタンを実効支配しているタリバンへ引き渡しなどを要求する最後通告を出したが拒否された。10月7日空爆が開始され、2ヶ月でタリバンは崩壊、2002年6月カルザイ大統領の下アフガニスタン暫定政府が発足した。以後、国際社会からは史上最大の復興援助が行われている。治安維持については2001年12月の安保理決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)が協力している。その指揮権は2003年8月からNATOに委ねられている。NATOが欧州外で指揮権を握るのは1949年発足以来初めてである。米軍の過激派掃討作戦は続いているが、ISAF(本年6月現在37か国)の治安維持作戦は「ブッシュ大統領が国際社会の同意を得ずに始めた米国の戦争」とは言えないだろう。その真偽は疑わしいが、2004年アルカイダ傘下を名乗る組織から日本をテロの標的とする声明もあった。国際テロ組織が、現在日本を含む世界の脅威であることは間違いない。
17世紀前半の30年戦争は、近・現代の基礎となる主権国家体制を認める1648年のウエストファリア条約を生んだ。昨年「近未来を考える(ニュールネサンスからメタモダンへ)」(本欄2006年10月16日付け投稿147号拙稿)で論じたように、私は9・11からアフガン、イラクへと続く現在の武力紛争はメタモダン(超現代)の基礎となる構図(6種あろう)を定める「新しい30年戦争」であると考えている。6構図の一つとして乱世(国際テロ、反米勢力台頭、核兵器拡散)がある。その到来を望む人はあまりいないだろう。問題は、どう避けるかである。
テロ特措法を巡る討議で、暴力の連鎖を指摘し、武力行使では解決できないとの意見が見られる。社会福祉への援助などの別の方法を重視すべしと言うのである。日本のODAが削減されつつある現在、重視したい意見である。しかし、これに対しては、まず給油・給水は武力行使ではないことを指摘したい。さらに本質的な問題がある。残念ながら、現在多くのテロは狂信という別の次元によっている。しかもアフガニスタンの韓国人人質事件で巨額の身代金が支払われたとされるように、テロリストを犯罪者と区別することも困難である。世界の秩序を守るのに、武力行使は不可欠である。我が国は、少なくとも、その邪魔をしてはならない。
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