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2020-10-08 00:00
日本学術会議、「大改革」は長年の課題
加藤 成一
元弁護士
日本の科学者を代表する国の特別機関「日本学術会議」(梶田隆章会長)が推薦した新会員候補者105名のうち「安保法制」等に反対した法律学者ら6名を今回、菅首相が任命しなかった問題で、共産党など野党側から「学問の自由侵害」などと批判する声が上がっている。日本学術会議によると推薦した候補者が任命されないのは前例がないという。報道等によると、6名は松宮孝明立命大教授(刑事法学)、小沢隆一東京慈恵医科大教授(憲法学)、岡田正則早稲田大教授(行政法学)、宇野重規東京大教授(政治学)、加藤陽子東京大教授(歴史学)、芦名定道京都大教授(キリスト教学)の各氏である。松宮氏や小沢氏は「共謀罪」や「安保法制」に対し国会で反対意見を述べた。宇野氏や岡田氏、芦名氏も「安保法制」に反対する立場を示したほか、加藤氏も「共謀罪」や「特定秘密保護法」に反対していた。
日本学術会議を巡る騒動は今に始まったことではない。吉田茂元首相は「日本学術会議が政治批判ばかりやるなら政府機関であるよりも民間団体になった方がよい」(1953年)という言葉を残している。鈴木善幸内閣の中山太郎総理府総務長官も「日本学術会議の現状は左翼的なイデオロギーに偏向した会員に牛耳られており、抜本的改革が必要だ」(1980年)と述べ、1981年には日本学術会議自身も改革委員会を設置したが、左翼系会員の抵抗で「改革」は進まなかった。その後、日本学術会議は、2017年3月に、国家の安全保障に関する一切の軍事的研究を全面禁止する声明まで出すに至った。有力会員である物理学の小沼通二慶応大名誉教授が、「他国に脅威を与えないことが脅威を受けない道なのだから、自衛隊は縮小し、廃止を目指すべきである」(論文「初期の日本学術会議と軍事研究問題」2017年参照)と述べたのは、象徴的であろう。
日本学術会議の「軍事研究全面禁止声明」が、「ミサイル防衛研究」など自衛のためのそれを含む学問の世界の軍事的研究の道を閉ざしているのであれば、組織の「正常化」「大改革」が不可欠である。日本学術会議といえども一切の批判を受け付けない特権団体ではない。今回の菅首相による「任命拒否」が国民のための日本学術会議の「改革」の第一歩であるとすれば、筆者は歓迎する。
なお、法律上、国の特別機関である日本学術会議の会員の任命権はあくまでも内閣総理大臣にあり(日本学術会議法7条)、したがって、内閣総理大臣には被推薦者を無条件で任命すべき法的義務はなく裁量権があるから、「任命拒否」につき違法性はない。また、野党側から、「任命拒否」は「学問の自由侵害」との批判があるが、憲法23条の「学問の自由」とは、「学問の研究・発表・教授の自由」(最大判昭38・5・22刑集17・4・370)を意味し、特定の学術団体の会員になるかどうかや、なれるかどうかは学問の自由とは関係がない。なぜなら、「任命拒否」された上記6名の研究者の「学問の研究・発表・教授の自由」は、政府から侵害されておらず、将来に向けても脅かされていないことが明らかだからである。日本学術会議が示す理念は日本の繁栄に不可欠なもので、「大改革」がなされれば、国民が受ける恩恵は大きなものであろう。菅首相には、見当違いな主張に屈せず、日本学術会議を正しく導いていただきたい。
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