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2020-10-10 00:00
「デジタル庁」に期待して
大矢 実
日本国際フォーラム研究員
菅新政権が強調する目玉政策の一つが、デジタル化である。デジタル化は、長年叫ばれては進まない課題の一つだ。特に安倍政権最終期にデジタル担当相がはんこ議連の会長だったことはこれを象徴している。国連が2年に1度発表する電子政府先進国のランキングがあるが、その最新版が報告されたところによると、1位はデンマークだった。これは不思議ではない。マイクロソフトのスカイプを開発したヤヌス・フリスはデンマーク人で、彼は自国政府のIT政策の充実を2000年代にして、すでに語っていた。だが、面白いのはその次だ。同ランキングでは、韓国はデンマークに次いで世界第2位としている。なお、日本は14位である。
日本では、多くの行政手続き、例えば住民票の記載内容の変更などをするには、いちいち役所に出向く必要があるが、韓国では自宅からいつでも行政手続きできる。もちろん、手数料もデジタル化の恩恵として無料になったものが多い。とはいえ、かつては、韓国も、印鑑登録制度が残っていたりと、日本と大差なかった。節目となったのは、「行政情報共同利用法」が施行された2006年だ。これ以降、プラットフォームとなる行政の基盤システムに行政情報を一元化することに努め、現在では、中央省庁や地方自治体など行政機関の情報が統一管理されている。中央政府、都道府県、市町村がそれぞれにシステムを発注、運用し、その統合に今まさに苦労している日本とは好対照だ。このような、基盤システムの基礎的な差は行政コストの差だけでなく、それを実現するIT産業そのものの地力の差ともなり得るのであって、いま、菅新政権が個々を重点的に推し進めようとしていることは、非常に意味があり、遅すぎるということはない。
もちろん、韓国の例が示すのは良い点だけではない。デジタル化の進展は大規模な情報漏洩事件やシステム障害事故を引き起こしたからだ。だが、壊れない機械がないのと同じように侵害されない情報セキュリティもない。日本ではマイナンバー制度の規制の厳格性などにみるに個人情報の保護に過度に敏感だが、セキュリティレベルを高く目指すのは当然として、リスクに勝る恩恵がデジタル化にあることは確認したい。デジタル化と情報セキュリティを両立しつつ、電子政府化を推し進めていきたいものだ。
政府共通プラットフォームの開発を思うまでもなく、莫大な投資が、これまで中央省庁で行われてきたが、前向きに捉えれば、霞が関の個々の情報インフラはしっかりとシステム化されているということでもある。将来、設置されるであろう「デジタル庁」には、まずはそれをAPI連携させるなど、検討できるアイディアは一歩一歩確実に進めてほしい。菅新政権のリーダーシップに期待したい。
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