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2020-10-12 00:00
(連載1)QUAD、対中外交の基盤強化
鍋嶋 敬三
評論家
東京を舞台に10月6日開かれた第2回日米豪印4ヶ国外相会合(QUAD)は、安全保障上の共通の脅威である中国に対する日本外交の基盤を強化した。「自由で開かれたインド太平洋」のビジョン実現のため、自由と民主主義の理念、価値観を共有する4ヶ国が結束を強め、地域的広がりを求めて協力を進めることで一致した意義は大きい。会合は1年前の2019年9月、国連総会の場を利用して始まったが、今年は新型コロナウイルス禍の最中、わざわざ東京に集まったのはその重要性を認めた各国の意気込みの表れである。今回の特徴は、(1)北朝鮮、東シナ海、南シナ海という安全保障の主要な懸念に具体的に言及した、(2)「自由で開かれたインド太平洋」を括弧でくくり、戦略構想としての概念を明確にした、(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)への「全面的支持」に踏み込み、「欧州」に初めて言及して世界的な支持を広く求めたことである。
このような成果は、習近平政権の強権的な中国に対する国際社会の懸念と対応が広がったことが背景にある。4ヶ国会合に対して中国は「閉鎖的、排他的な『小さなグループ』を作り、第三国の利益を損なうものであってはならない」と在日大使館報道官が「記者団の質問に答える」形式で批判した。特に米国のポンペオ国務長官が日本の新聞の単独インタビューで「中国共産党の挑戦」に対する「安全保障の枠組み」の構築を提唱したことに鋭く反発。「ポンペオ氏はうそをでっち上げ、政治的対立を敵意をもって作り出すもので、その企みは思い通りになることはない」と厳しい批判を浴びせた。トランプ政権の米国と、その同盟国や友好国である日豪印との間にくさびを打ち込み、「対中包囲網」を拡大させないという姿勢が強くにじんでいる。
外相会合でのポンペオ長官の発言は中国共産党(CCP)に対する強硬姿勢が鮮明だった。国務省発表によれば、「武漢からのパンデミック(世界的流行)」、「CCPの隠蔽による危機の極度の悪化」、「CCPの搾取、腐敗、威圧」などの激しい言葉が並ぶ。危機の例として南シナ海、東シナ海、メコン地域、ヒマラヤ山脈、台湾海峡を挙げ、4ヶ国協力体制を前進させて具体的な歩を進めることへの期待を示した。トランプ政権がQUADに寄せる期待と意気込みが大きいことは、大統領自身がコロナウイルスに感染した政権危機にもかかわらず、最重要閣僚の国務長官がアジア歴訪のうちモンゴルと韓国訪問を延期しても、日本だけは訪れてQUAD開催に執念を示したことに表れている。
米国の同盟国であるオーストラリアのモリソン政権もコロナ禍や同国人の中国による拘束など対中姿勢で強硬なトランプ政権と歩調を合わせた。QUADを利用した米豪外相会談で両者は「地域における中華人民共和国の邪悪な行動に懸念を共有」した(米国務省発表)。ペイン外相は4ヶ国会合で、国連海洋法会議(UNCLOS)の名を挙げ、「国際法に反する海洋主権の主張はできない」ことについて外相たちが繰り返し発言し、「メコン地域を含む地域の有志国や組織との協力を一層強化することに合意した」(豪外務省発表)と明記した。中国の関わりが深く、懸念される事柄や地域についてオーストラリアが具体的に言及したのは、コロナウイルスの発生について国際調査団受け入れを中国に迫ったことから関係が悪化、中国が対豪制裁措置を取ったことで、国民の対中感情が著しく悪化したことが背景にある。(つづく)
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